本研究は、植物からアミロイド様の蛋白質を見出し、その凝集メカニズムと生理機能を解明して、生物におけるアミロイドの意義を拡張しようとする試みである。本年度は最終年度に当たり、計画通り、植物アミロイドのモデルであるデハイドリンについて、凝集とラジカル静止に関与するHisリッチドメインが反復するよう分子設計した変異蛋白質を植物体内で発現させ、重金属耐性の強化が可能かを調査した。結果、野生株に対し、オリジナルのデハイドリンAtHIRD11を過剰に発現させると、銅に対する耐性が強化されたが、Hisリッチドメイン反復変異蛋白質を過剰に発現させても、銅に対する耐性は強化されず、むしろ、野生株と同等の銅耐性しか示さなかった。一方、His/Ala変換AtHIRD11を過剰発現させると、野生株と同等の銅耐性であった。以上の結果は、優れた銅耐性を発揮するには、AtHIRD11が概ね最適であり、Hisリッチドメインの反復を増やすと、むしろ毒性が出ることを示している。つまり、植物アミロイドには、正負の二面性があり、His含有率が適度(H25年度の結果では10~15%)である必要がある事を意味する。 さらに、植物アミロイドの重金属耐性に関するメカニズム研究の一環として、重金属で失活した酵素の活性を、デハイドリンが回復するかを調査した。その結果、銅によって失活したLDHにアミロイド様蛋白質AtHIRD11を与えると、LDHの活性が元のレベルにまで回復することが分かった。しかし、HisをAlaに変換したAtHIRD11には、そのような活性は見られなかった。植物アミロイド様蛋白質には、重金属によって阻害される酵素の活性回復に役立つものがあることが示唆された。 関連成果は、専門誌のレビューなどで積極的に報告した。
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