研究課題
脂肪組織へのマクロファージ(Mφ)の浸潤を引き金とする慢性炎症が、糖尿病などを含むメタボリックシンドローム(メタボ症候群)発症のカギとなる。Mφの脂肪組織への浸潤を抑制すればメタボ症候群を防ぐことができるが、これまでMφの脂肪組織への浸潤だけを阻害する薬は見つかっていない。最近細胞接着とシグナル伝達を制御するSorbsタンパク質CAPの遺伝子破壊は、Mφの脂肪組織への浸潤を抑制し、インスリン抵抗性と糖の恒常性維持を改善することが報告された。本研究では、CAPをターゲットとしたメタボ症候群改善因子(食品、薬)探索のための基盤を築き、改善因子探索を目指している。24年度は、まず用いるMφについて検討し、細胞株によってCAP、およびそのファミリー分子の発現量が異なることを見い出した。このうち一つの株を選び、これまでにCAPの発現抑制細胞を作成した。また、CAPの発現がMφの遊走に与える影響は、創傷治癒アッセイやエクセリジェンス装置を用いることで評価できることを示した。25年度は、CAPの発現抑制細胞にCAPタンパク質を再発現させる細胞を作成するとともに、これまでに構築したアッセイ系を用い、CAPの遊走に与える効果を評価する予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
これまでにCAPの発現抑制株を樹立し、しかも、遊走の測定系も確立しつつある。25年度にさらに実験を行うことで、マクロファージにおけるCAPおよびそのファミリー分子の遊走に対する効果が明らかになることが強く期待できる。
発現抑制実験は、しばしばオフターゲットと呼ばれる偽効果がある。この偽効果を排除するため、24年度に作成したCAP発現抑制細胞に、CAPを再発現させた細胞を作成する。これにより、CAP再発現により回復した効果のみをCAPによる効果とすることができる。これらの細胞を用い、24年度までに構築した測定系を用い、CAPのマクロファージの遊走に与える効果を検討する。また、CAPのファミリー分子も同様にCAP発現抑制株に発現させ、この効果と比較する。マクロファージにおいてCAP特異的な遊走への効果が確認されれば、食品由来化合物がこの効果に与える影響を検討する。
本研究は細胞の維持と遊走の測定に多くの高価な消耗品を必要とする。そのため25年度の研究費は、おもに物品費(消耗品費)として使用する。さらに、研究成果公表のため、学会参加を考えており、このための旅費にも使用する予定である。
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