• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

基部陸上植物の低い遺伝的冗長性を活用したシス-トランス転写制御システムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 24658095
研究機関京都大学

研究代表者

河内 孝之  京都大学, 生命科学研究科, 教授 (40202056)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード苔類ゼニゴケ / 転写因子 / 転写制御 / 陸上植物進化
研究概要

ゼニゴケは、遺伝的冗長性が低いが基本的な制御機構は種子植物と共通であることがわかってきた。配偶体世代(n)が優占的であるといった利点を生かした実験が可能となった。逆遺伝学的な解析や形質転換系統を利用した解析は極めて迅速に行えるようになった。ネガティブマーカーを利用した相同組換え体選抜法をゼニゴケに応用することによって、遺伝子破壊株作成がゼニゴケの日常的な実験ツールとなった。そこで、遺伝子発現制御に重要な転写因子を収集し、系統的に解析する系を立ち上げることにした。ゲノムDNAおよびESTのデータベースを用いてゼニゴケ転写因子をゲノムワイドに抽出した。その結果、転写因子は総数300程度であることがわかった。これは、シロイヌナズナの1/7程度の数である。一方、広義の遺伝子ファミリーとしてはシロイヌナズナ転写因子群(38ファミリー)と同等のものをもつことが明らかとなった。つまり、植物は陸上化した段階で基本的な遺伝子一式を備えていたと考えられる。そこで、現在、順次転写因子ORFに対する遺伝子を順次クローニング中である。また、これら転写因子のゼニゴケ生体内における機能を解析する系の開発を進めた。グルココルチコイド受容体ドメインを転写因子に融合することによって誘導的に発現させることに成功した。また、転写抑制ドメインを付与することによって転写因子をキメラリプレッサー化し系統的に解析する実験系を立ち上げた。両者位の性質を併せ持つ融合タンパク質を発現することによって、誘導的なリプレッサータンパク質発現の系も開発した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では1)ゲノム情報をもとにゼニゴケの全転写制御因子を抽出し、そのcDNAをクローン化する、2)ゲノム情報をもとに比較ゲノム解析によってシス配列の推定と単離を行う、3)カタログ化cDNAライブラリーを用いた酵母0ne-hybridシステムによる転写因子スクリーニング系を開発する、4)カタログ化cDNAライブラリーを用いた植物体における効率的な転写因子の解析系を開発する、5)植物解析系を応用し、プロテオミクス手法により転写複合体や細胞内動態を同定する、という具体的な目標を掲げた。1)の転写因子の情報科学的な抽出は完了し、そのクローン化も計画通り進展した。2)のcisの抽出については、オーキシン応答遺伝子を中心に抽出を進め、その予想の検証をおこなった。推定し、個別に検証を進める道筋ができた。3)のOne-hybrid解析系は、1)のクローン化の後で行う予定であるが、酵母を利用したゼニゴケ遺伝子機能解析については、一定のノウハウを蓄積した。4)については、研究実績の欄に記入したように、実験系が構築できた。5)については、複合体単離の実験を複数進めており、その研究からのフィードバックが得られ、転写因子の解析にも利用できる段階にある。従って、当初の研究計画は順調に進展したと考えている。

今後の研究の推進方策

上記の項目1)については、ゲノム情報をもとにゼニゴケの全転写制御因子を抽出しは完了した。抽出したデータのデータベースにおける利用をはかる。また、転写因子ORFに対するcDNAのクローン化については、技術支援員の協力の下、効率的に順次進めていく。
項目2)については、対象とする現象を広げ、光応答因子や発生制御因子について、ゲノム情報をもとシス配列の推定と検証を進める。項目3)については、カタログ化cDNAライブラリーを発現する酵母ベクターを作成し、個別の遺伝子に対するtrans因子の同定に活用する。項目4)については、初年度に方法は開発済みである。その発展形として、光制御に関わる転写因子やオーキシン制御に関わる転写因子を対象に植物体における機能解析を効率的に進める。項目5)についても、光制御とオーキシン制御を題材にCitrineタグを利用して転写因子複合体を抽出してプロテオミクス手法により転写複合体を同定する。更に、ChIP-Seq法による転写因子の結合部位をゲノム上にマップする実験を加えることにより、項目2)と項目5)の相互的な推進をはかる。

次年度の研究費の使用計画

初年度の研究費は基本的に計画に従って使用したため、初年度請求額に対しては計画通り使用した。40千円足らずの残額が生じたが、これは全体に対して2%程度であり、研究の計画変更や遅れではなく効率的利用の努力により生じたものである。今年度の研究費は次のように使用する計画である。上記の項目1)の転写因子ORFに対するcDNAのクローン化、項目2)の光応答因子や発生制御因子に対するシス配列の検証、項目3)のカタログ化cDNAライブラリー発現酵母ベクターを作成と個別遺伝子の解析、項目4)の形質転換植物作成、項目5)のタンパク質複合体同定やChIP-Seqには、当初申請の通り、化学薬品、酵素類、培地類、容器類といった消耗品が必要である。また、転写因子cDNAの収集には技術支援員の雇用が有効であるため人件費が必要である。また、これらの成果は、学会における発表と論文化によって発表する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Efficient Agrobacterium-mediated transformation of the liverwort Marchantia polymorpha using regenerating thalli2013

    • 著者名/発表者名
      Kubota, A., Ishizaki, K., Hosaka, M., and Kohchi, T.
    • 雑誌名

      Biosci. Biotechnol Biochem

      巻: 77 ページ: 167-172

    • DOI

      10.1271/bbb.120700

  • [雑誌論文] Homologous recombination-mediated gene targeting in the liverwort Marchantia polymorpha L.2013

    • 著者名/発表者名
      Ishizaki, K., Johzuka-Hisatomi, Y., Ishida, S., Iida, S., and Kohchi, T.
    • 雑誌名

      Sci. Rep.

      巻: 3 ページ: 1532

    • DOI

      10.1038/srep01532

    • 査読あり
  • [学会発表] ゼニゴケ気室形成制御遺伝子NOPPERABO1の単離と解析

    • 著者名/発表者名
      水谷未耶,石崎公庸,増田晃秀,桐田啓如,西浜竜一,河内孝之
    • 学会等名
      日本植物学会第76回大会
    • 発表場所
      兵庫県立大学(姫路市)
  • [学会発表] ゼニゴケ形態形成におけるMpIAAを介したオーキシン転写制御の多面的役割

    • 著者名/発表者名
      加藤大貴、石崎公庸、河内孝之
    • 学会等名
      日本植物学会第76回大会
    • 発表場所
      兵庫県立大学(姫路市)
  • [学会発表] ゼニゴケのALTERED MERISTEM PROGRAM 1 (AMP1) 変異体はオーキシン低感受性を示す

    • 著者名/発表者名
      桐田啓如、武田真由子、石崎公庸、河内孝之
    • 学会等名
      日本植物学会第76回大会
    • 発表場所
      兵庫県立大学(姫路市)

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi