研究課題
陸上植物進化の基部に位置する苔類ゼニゴケは遺伝的冗長性が低い。この傾向は制御因子で顕著である。実験材料として優れた特徴をもつゼニゴケを材料として、ゲノム中の転写因子遺伝子を推定し、その制御系の全体像を理解することを目的とした。まず、ゼニゴケESTデータベースいおよびRNAシーケンスのデータベースからBLAST検索を用いて網羅的に転写因子をコードする遺伝子を推定した。ゼニゴケでは38遺伝子ファミリー、約300個の転写因子がゲノムにコードされていた。ファミリー数はシロイヌナズナと同数であるにもかかわらず、転写因子はシロイヌナズナの約2000個の1/6以下であった。なかでも、特定の転写因子、例えばMADS転写因子のファミリーサイズがシロイヌナズナで大幅に増加していることがわかった。つまり、ゼニゴケは転写因子総数は少ないものの基本的な転写因子レパートリーを保持していた。このことは、植物が陸上進出を果たした時点で転写制御系の原形が確立していたことを意味する。次に、転写因子の網羅的収集を進めた。なかでも、比較的遺伝子ファミリーの規模が大きく、タンパク質相互作用を介した複合体による制御が期待できるbHLH転写因子群、オーキシンの信号伝達に関連する転写因子群を優先し、全長ORFに対応するcDNAクローニングを進めた。また、萌芽研究を単なる基盤整備事業としないために、特定の転写因子を先行事例として機能解析を進めた。当研究室で開発した相同組み換えを利用した遺伝子ターゲティング法により、複数の転写因子遺伝子を破壊した。これらの多くで顕著な表現型が観察されており、転写因子による制御の重要性が明らかとなった。苔類ゼニゴケが陸上植物の進化的変遷や成立を理解するために重要な位置にあることを活かして、陸上植物のシス-トランス転写因子制御の普遍性と多様性の理解を深めることができた。
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