研究課題
病原性ウイルスの検出と予防には抗原タンパク質を利用した感染検査薬やワクチン開発が必要である。様々なウイルスへ対応するため,迅速な遺伝子クローニング法と抗原タンパク質の高発現系の開発を行っている。組換え遺伝子の構築法の開発においては,酵母Saccharomyces cerevisiaeを用いて染色体上へ組換え遺伝子を構築する方法を開発した。これにより,B型肝炎ウイルスの表面抗原タンパク質であるHBsLをGFP融合体として発現させた。一方,耐熱性酵母Kluyveromyces marxianusにおいては,栄養要求性変異株を取得し,非相同末端結合によるランダム導入法を利用した変異遺伝子の同定を行い,新規な酵母における選択マーカー遺伝子群の準備と形質転換系を完成させた。さらに,非相同末端結合を利用し,2つのDNA断片を混合して形質転換するだけでクローニングができる新しい方法を開発した。これらの方法の開発により,多種類の遺伝子を大腸菌を使わずに酵母へクローニングし,発現させる組換え構築系を完成させた。耐熱性酵母におけるHBsLの発現でもHBsLタンパク質の分解が起こる。様々なHBsL変異体を新しいクローニング法で作成し,発現させてみたところ分解が止まる変異体を得ることができた。この変異はHBsLのC末側の変異であり,疎水性配列に関係したので,疎水性配列とタンパク分解に関連が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的であったPCR操作による遺伝子操作法の開発は,予定通り進行し,酵母Saccharomyces cerevsiaeにおける操作,および,耐熱性酵母Kluyveromyces marxianusにおける非相同末端結合を利用した操作ともほぼ完成させることができた。耐熱性酵母においては,形質転換系,プラスミド操作系,2種のPCR産物を混合させて形質転換させてクローニングできる新しい方法や,オリゴDNAプライマーにペプチド配列を設計してクローニングする多種のペプチド遺伝子構築法を作成できた。一方,ウイルスタンパク質の分解経路の解析においては,HBsLの分解を回避できる変異体を取得することに成功した。疎水性配列領域に変異を入れたものなので,疎水性配列とHBsLの分解に関係があると考えられる。この変異体を用いることでHBsLの安定な発現が可能となった。同様の変異を他のウイルスタンパク質に導入することで安定な発現が期待できる。
酵母における遺伝子操作は完成できたので,抗原タンパク質の高発現系の開発とタンパク質分解経路の解析を目指す。耐熱性酵母の高発現系の開発においては,高発現プロモータを利用した発現系を構築する。また,酵母ではマルチコピープラスミドがあるので,マルチコピープラスミドと高発現プロモータを利用した開発を行い,分解されない変異体を発現させ,超高発現を目指す。さらに,タンパク質の精製法も開発する。分解経路の解析においては,分解を促進する遺伝子を探すことにした。変異スクリーニングでは取得はできていないので,分解に関与する遺伝子を導入して探索することにより,分解遺伝子の同定を試みる。
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Yeast
巻: 31 ページ: 29-46
10.1002/yea.2993
巻: 30 ページ: 243-253
10.1002/yea.2957
巻: 30 ページ: 485-500
10.1002/yea.2985