研究課題/領域番号 |
24658097
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
増村 威宏 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (50254321)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 植物 / 遺伝子発現 / 脂質 / イネ種子 / アリューロン層 / 転写因子 / 脂質合成遺伝子 / 形質転換イネ |
研究概要 |
イネ種子の機能性成分として知られている脂質や有機酸類は、胚芽とアリューロン層(ぬか層)に多く蓄積するが、アリューロン層は種子全体の5%未満と少ない。そこで、本研究では機能性成分を蓄積するアリューロン層を増強することを目指した。そのためには、1) 胚乳分化を制御し、本来デンプン性胚乳へ分化する組織をアリューロン層に変換すること、2) アリューロン層において代謝産物の合成経路を強化することが必要だと考えられる。本研究では脂質をモデル系とし、胚乳分化期に特異的な転写因子の発現を制御した上で、アリューロン層における脂質合成の鍵酵素を高発現することにより、リピッド高蓄積のイネ種子を作出することを目的とした。 1)胚乳分化期特異的転写因子遺伝子を過剰発現するイネの解析 胚乳分化を制御するために、これまでに単離した胚乳分化初期に特異的に発現する転写因子(NFYB)遺伝子を、ユビキチンプロモーターの制御下で過剰発現するイネを作出し、胚乳組織の形態が変化している形質転換系統を探索した。その結果、サブアリューロン層が増大する系統を得ることに成功した。 2)脂質合成関連遺伝子を過剰発現するイネの解析 これまでに単離した脂質合成関連遺伝子の中から、脂肪酸合成の初発に重要な働きをするACCase遺伝子、アシルACPを転移するGPAT遺伝子、貯蔵脂質合成の最終段階で働くDGAT遺伝子をそれぞれ過剰発現するイネの作出用に遺伝子コンストラクトを作製した。また、単離した脂質合成関連遺伝子の機能を調査するために、酵母の発現系を利用し、各遺伝子を発現する酵母クローンを得た。各酵母における脂質含量を生化学的解析手法により調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)胚乳分化期特異的転写因子遺伝子を過剰発現するイネの解析 胚乳分化初期に特異的に発現する転写因子(NFYB)遺伝子を、ユビキチンプロモーターの制御下で過剰発現するイネを作出し、胚乳組織の形態が変化している形質転換系統を得ることに成功した。 2)脂質合成関連遺伝子を過剰発現するイネの解析 脂肪酸合成経路で働く重要な遺伝子(ACCase遺伝子、GPAT遺伝子、DGAT遺伝子)をイネで過剰発現するための遺伝子コンストラクトを作製した。また、酵母発現系を用いて各脂質合成遺伝子を発現する酵母クローンを得て、解析を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
1)胚乳分化期特異的転写因子遺伝子を過剰発現するイネの解析 24年度に作出した胚乳分化初期に特異的に発現する転写因子(NFYB)遺伝子を、ユビキチンプロモーターの制御下で過剰発現するイネについて、イネ種子に対する電子顕微鏡観察を行い、アリューロン組織の変化を詳細に明らかにする。 2)脂質合成関連遺伝子を過剰発現するイネの解析 24年度に構築した、脂肪酸合成経路で働く重要な遺伝子(ACCase遺伝子、GPAT遺伝子、DGAT遺伝子)の遺伝子コンストラクトについては、順次イネカルスへ感染し、脂質合成遺伝子を過剰発現した形質転換イネを作出する。また、各遺伝子を過剰発現する酵母クローンについては、脂質成分を分析すると共に、貯蔵脂質合成に効果的な遺伝子を探索することで、上記の形質転換体イネ作出の予備的な実験として活用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費については、交付申請書に記載した計画に従って使用する予定である。
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