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2013 年度 実施状況報告書

イネ種子における脂質合成の分子機構解明によるリピッド高蓄積米の作出

研究課題

研究課題/領域番号 24658097
研究機関京都府立大学

研究代表者

増村 威宏  京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (50254321)

キーワード植物 / 遺伝子発現 / 脂質 / イネ種子 / アリューロン層 / 転写因子 / 脂質合成遺伝子 / 形質転換イネ
研究概要

イネ種子の機能性成分として知られている脂質や有機酸類は、胚芽とアリューロン層(ぬか層)に多く蓄積するが、アリューロン層は種子全体の5%未満と少ない。そこで、本研究では機能性成分を蓄積するアリューロン層を増強することを目指した。そのためには、1) 胚乳分化を制御し、本来デンプン性胚乳へ分化する組織をアリューロン層に変換すること、2) アリューロン層において代謝産物の合成経路を強化することが必要だと考えられる。本研究では脂質をモデル系とし、胚乳分化期に特異的な転写因子の発現を制御した上で、アリューロン層における脂質合成の鍵酵素を高発現することにより、リピッド高蓄積のイネ種子を作出することを目的とした。
1) 胚乳分化期特異的転写因子遺伝子を過剰発現するイネの解析
胚乳分化を制御するために、これまでに単離した胚乳分化初期に特異的に発現する転写因子(NFYB)遺伝子を、ユビキチンプロモーターの制御下で過剰発現するイネを作出し、胚乳組織の形態観察、脂質蓄積部位の観察、脂質蓄積量の変化に関する実験を行った。その結果、アリューロン層の数に変化は無かった。一方、デンプン性胚乳組織が縮小するため、種子当りの脂質含量は増大することが明らかになった。
2) 脂質合成関連遺伝子を過剰発現するイネの解析
これまでに単離した脂質合成関連遺伝子の中から、脂肪酸合成の初発に重要な働きをするACCase遺伝子、アシルACPを転移するGPAT遺伝子、貯蔵脂質合成の最終段階で働くDGAT遺伝子をそれぞれ過剰発現するイネ作出用の遺伝子コンストラクトが調製出来た。また、酵母の発現系を利用し、単離した各遺伝子を発現する酵母クローンの解析を進めたが、各酵母における脂質含量については大きな変動は見られなかった。イネ由来のcDNAが酵母の代謝系では動かない可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(理由)1)胚乳分化期特異的転写因子遺伝子を過剰発現するイネの解析
胚乳分化初期に特異的に発現する転写因子(NFYB)遺伝子を、ユビキチンプロモーターの制御下で過剰発現するイネを作出し、形態観察、脂質含量などを調査した。その結果、種子当りの脂質含量が増加した系統があった。
2)脂質合成関連遺伝子を過剰発現するイネの解析
脂肪酸合成経路で働く重要な遺伝子(ACCase遺伝子、GPAT遺伝子、DGAT遺伝子)をイネで過剰発現するための遺伝子コンストラクトを作製したが、同一の遺伝子を酵母で発現したが脂質含量に変化が認められなかった。そこで、次年度はイネの遺伝子発現解析と形質転換体作出に研究の焦点を絞ることにした。

今後の研究の推進方策

1)胚乳分化期特異的転写因子遺伝子を過剰発現するイネの解析
胚乳分化初期に特異的に発現する転写因子(NFYB)遺伝子を、ユビキチンプロモーターの制御下で過剰発現するイネ種子の形態観察を継続し、胚乳組織の変化を明らかにする。また、新たにアリューロン組織を増大する可能性のある転写調節因子をRNA Seqなどの解析手法も加えて再度探索する。候補遺伝子の過剰発現体を作出する。
2)脂質合成関連遺伝子を過剰発現するイネの解析
脂肪酸合成経路で働く重要な遺伝子(ACCase遺伝子、GPAT遺伝子、DGAT遺伝子)について、過剰発現した形質転換イネを作出する。また、1)の転写因子探索と同様に、貯蔵脂質合成により効果的に寄与する遺伝子を再度探索し、候補遺伝子にいついて発現解析を行う。

次年度の研究費の使用計画

1)胚乳分化期特異的転写因子遺伝子を過剰発現するイネの解析 胚乳分化初期に特異的に発現する転写因子(NFYB)遺伝子を、ユビキチンプロモーターの制御下で過剰発現するイネ種子の解析を行ったが、期待していたアリューロン層の増大が見られず、解析実験の内容を見直したため。
2)脂質合成関連遺伝子を過剰発現するイネの解析 脂肪酸合成経路で働く重要な遺伝子(ACCase遺伝子、GPAT遺伝子、DGAT遺伝子)の遺伝子過剰発現用のコンストラクトは出来たが形質転換イネの作出がやや遅れているため、解析実験を実施しなかったため。上記の理由で消耗品費の使用が少なく済んだため、次年度に廻した。
1)胚乳分化期特異的転写因子遺伝子を過剰発現するイネの解析 新たにアリューロン組織を増大する可能性のある転写調節因子をRNA Seqなどの解析手法も加えて再度探索し、候補遺伝子の過剰発現体を作出する。
2)脂質合成関連遺伝子を過剰発現するイネの解析 脂肪酸合成経路で働く重要な遺伝子(ACCase遺伝子、GPAT遺伝子、DGAT遺伝子)の過剰発現した形質転換イネを作出し、解析を行う。また、新たに貯蔵脂質合成により効果的に寄与する遺伝子を探索し、候補遺伝子にいついて発現解析を行う。以上、新たに加わる遺伝子について解析を行う必要が生じたため、これまでの計画に加えて実施する予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] RNAi-mediated suppression of endogenous storage proteins leads to a change in localization of overexpressed cholera toxin B-subunit and the allergen protein RAG2 in rice seeds.2014

    • 著者名/発表者名
      Shiho Kurokawa, Masaharu Kuroda, Mio Mejima, Rika Nakamura, Yuko Takahashi, Hiroshi Sagara, Natsumi Takeyama, Shigeru Satoh, Hiroshi Kiyono, Reiko Teshima, Takehiro Masumura, Yoshikazu Yuki
    • 雑誌名

      Plant Cell Reports

      巻: 33 ページ: 75-87

    • DOI

      10.1007/s00299-013-1513-3

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Molecular cloning, gene expression and functional expression of a phosphoenolpyruvate carboxylase Osppc1 in developing rice seeds: implication of involvement in nitrogen accumulation.2014

    • 著者名/発表者名
      Naoki Yamamoto, Tatsuya Kubota, Takehiro Masumura, Naomasa Shiraishi, Kunisuke Tanaka, Toshio Sugimoto, Yoshikiyo Oji
    • 雑誌名

      Seed Science Research

      巻: 24 ページ: 23-36

    • DOI

      10.1017/S0960258513000354

    • 査読あり
  • [雑誌論文] MucoRice-cholera toxin B-subunit, a rice-based oral cholera vaccine, down-regulates the expression of α-Amylase/trypsin inhibitor-like protein family as major rice allergens.2013

    • 著者名/発表者名
      Shiho Kurokawa, Rika Nakamura, Mio Mejima, Hiroko Kozuka-Hata, Masaharu Kuroda, Natsumi Takeyama, Masaaki Oyama, Shigeru Satoh, Hiroshi Kiyono, Takehiro Masumura, Reiko Teshima, Yoshikazu Yuki
    • 雑誌名

      Journal of Proteome Research

      巻: 12 ページ: 3372-3382

    • DOI

      10.1021/pr4002146

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Induction of toxin-specific neutralizing immunity by molecularly uniform rice-based oral cholera toxin B subunit vaccine without plant-associated sugar modification.2013

    • 著者名/発表者名
      Yoshikazu Yuki, Mio Mejima, Shiho Kurokawa, Tomoko Hiroiwa, Yuko Takahashi, Daisuke Tokuhara, Tomonori Nochi, Yuko Katakai, Masaharu Kuroda, Natsumi Takeyama1, Koji Kashima1, Michiyo Abe, Yingju Chen, Ushio Nakanishi, Takehiro Masumura, Yoji Takeuchi, Hiroko Kozuka-Hata, Hiroaki Shibata, et. al
    • 雑誌名

      Plant Biotechnology Journal

      巻: 11 ページ: 799-808

    • DOI

      10.1111/pbi.12071

    • 査読あり
  • [学会発表] イネ種子で発現する貯蔵脂質合成関連遺伝子群の解析2013

    • 著者名/発表者名
      ○堺谷荘太、斉藤雄飛、東田潤、土居誠、森田重人、佐藤茂、石丸努、近藤始彦、増村威宏
    • 学会等名
      第31回植物細胞分子生物学会
    • 発表場所
      北海道大学
    • 年月日
      20130910-20130910
  • [学会発表] 経口ワクチン用キャリアーを目指したイネ種子PB-Iの特定部位への外来タンパク質局在化と消化酵素耐性に関する研究2013

    • 著者名/発表者名
      ○佐生愛、重光隆成、齊藤雄飛、田中愛実、森田重人、佐藤茂、増村威宏
    • 学会等名
      第31回植物細胞分子生物学会
    • 発表場所
      北海道大学
    • 年月日
      20130910-20130910
  • [学会発表] 抗菌タンパク質を発現するイネに関する研究2013

    • 著者名/発表者名
      ○菊田桃香、佐生愛、重光隆成、森田重人、佐藤茂、増村威宏
    • 学会等名
      第31回植物細胞分子生物学会
    • 発表場所
      北海道大学
    • 年月日
      20130910-20130910
  • [学会発表] イネ種子プロテインボディタイプI(PB-I)に蓄積するプロラミン分子種間の相互作用の解析2013

    • 著者名/発表者名
      ◯佐生愛、重光隆成、森田重人、佐藤茂、増村威宏
    • 学会等名
      日本農芸化学会関西支部大会
    • 発表場所
      広島県立大学
    • 年月日
      20130906-20130906
  • [学会発表] 日本晴と組換えワクチン発現イネにおけるコメアレルゲンRAG2タンパク質の種子内局在部位2013

    • 著者名/発表者名
      ○黒河志保、黒田昌治、目島未央、中村里香、高橋裕子、相良洋、竹山夏実、佐藤茂、清野宏、手島玲子、増村威宏、幸義和
    • 学会等名
      本農芸化学会関西支部第480回講演会
    • 発表場所
      大阪府立大学
    • 年月日
      20130706-20130706
  • [学会発表] 経口コメ型ワクチンMucoRice-CTBにおける主要アレルゲンのプロテオーム解析2013

    • 著者名/発表者名
      ○黒河志保、中村里香、目島未央、秦裕子、黒田昌治、竹山夏実、尾山大明、佐藤茂、清野宏、増村威宏、手島玲子、幸義和
    • 学会等名
      日本農芸化学会関西支部第479回講演会
    • 発表場所
      京都府立大学
    • 年月日
      20130525-20130525

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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