研究課題/領域番号 |
24658098
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
吉岡 佐知子 近畿大学, 農学部, 助手 (80200939)
|
研究分担者 |
山本 兼由 法政大学, 生命科学部, 准教授 (40351580)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 環境応答 / 大腸菌 / 遺伝子組換え / セシウム / ゲノム発現 / セシウム輸送タンパク質 / セシウム結合タンパク質 / セシウム除染 |
研究概要 |
今年度は「セシウム適応に必至な大腸菌遺伝子の同定」に向けた「大腸菌の高濃度セシウム適応応答全遺伝子発現プロファイル」の取得と「セシウム高蓄積能をもつ大腸菌の作成」のための「恒常的セシウム特異的取り込みシステムおよび結合タンパク質の過剰発現システムの構築」の基盤研究と「大腸菌におけるセシウム蓄積能の測定」の確立を行った。 「大腸菌の高濃度セシウム適応応答全遺伝子発現プロファイル」を取得するため、まず大腸菌の培養条件を検討した。当初、M9最小培地を用いた高濃度セシウム添加に対する大腸菌生育の影響を調べたが、比較的高濃度(5mM以上)のセシウム存在下でも大腸菌が生育でき、かつ10mM 以上の塩化セシウムを添加すると培地に沈殿が生じた。そこでMOPS最小培地に変更すると高濃度のセシウム添加を可能とした。そして、塩化セシウムの生育への影響を調べ、生育に影響を与えない濃度を決定した。次に、決定した濃度の1/2濃度の塩化セシウムを対数増殖期大腸菌培養液に添加し、5分後と30分後の全RNAを調製した。 一方「恒常的セシウム特異的取り込みシステムおよび結合タンパク質の過剰発現システムの構築」の基盤研究として、大腸菌モリブデン酸特異的取り込みおよび結合タンパク質を用いた恒常的遺伝子発現システムの開発に成功した。つまり、取り込みシステムはアラビノース誘導型araプロモーター、結合タンパク質はIPTG誘導型lacプロモーターが大腸菌細胞内での恒常的発現に有効であった。さらに「大腸菌におけるセシウム蓄積能の測定」について検討した。結果として大腸菌細胞中のセシウムに加え、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、チタン、亜鉛を誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)により測定できることを確認した。この測定法により次年度作製されるセシウム高蓄積能をもつ大腸菌の機能解析が可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
従来の金属イオンにより解析した包括的実験系が、うまくセシウムの解析に当てはまらなかった。しかし、その要因を培地成分と特定し培地の選定に成功した。このために全体計画としての進展はやや遅れていが、これらの知見は今後の研究進展をスムーズに行うための必須な知見であった
|
今後の研究の推進方策 |
「大腸菌高濃度セシウム適応応答全遺伝子発現プロファイル」の取得を行う。その結果より、発現変動が著しい(1)膜たんぱく遺伝子、(2)転写制御遺伝子、(3)金属結合モチーフをもつタンパク質遺伝子を選抜し、「セシウム適応に必至な大腸菌遺伝子の同定」をする。さらに、セシウム輸送に関与すると予想される膜たんぱく質はアラビノース誘導型araプロモーターで、セシウム結合に関与すると予想される転写制御遺伝子および金属結合モチーフ遺伝子は、IPTG誘導型lacプロモーターで大腸菌細胞内での恒常的に発現させるシステムを構築し、終局的にはこれらのシステムを同時に大腸菌に導入し、セシウム高蓄積大腸菌を作製する。このセシウム高蓄積大腸菌は細胞内のセシウムに加え、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、チタン、亜鉛を誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)により測定し、その機能を解析する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主な直接経費は次の通りである。 ・トランスクリプトーム解析に係る試薬、酵素、ガラスおよびプラスチック器具の購入 ・遺伝子組み換え実験に係る試薬、酵素、ガラスおよびプラスチック器具の購入 ・研究打ち合わせのための旅費 ・研究成果発表のための旅費
|