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2012 年度 実施状況報告書

乳酸菌によるペプチド腸管送達系の構築と炎症性腸疾患治療への応用

研究課題

研究課題/領域番号 24658099
研究機関福岡大学

研究代表者

見明 史雄  福岡大学, 薬学部, 教授 (50248522)

研究分担者 鹿志毛 信広  福岡大学, 薬学部, 教授 (80185751)
佐藤 朝光  福岡大学, 薬学部, 助教 (90369025)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード乳酸菌 / CTB-YVAD融合体 / 抗炎症作用 / 炎症性腸疾患
研究概要

本研究の目的は、caspase-1の活性化を阻害するYVAD(チロシン-バリン-アラニン-アスパラギン酸)をCholera Toxin B subunit (CTB)との融合体として分泌する乳酸菌を作出し、炎症性腸疾患 (IBD)の治療薬として応用することにある。平成24年度は、大腸菌と乳酸菌のシャトルベクターpHIL253を作製した後、CTBおよびCTB-YVAD融合タンパク質を分泌するLactobacillus caseiを作出した。L. caseiに分泌させたCTBおよびCTB-YVADは、Vibrio choleraeが産生するCTBと同様に、GM1-gangliosideに結合することを確認した。さらに、CTB-YVADの生理活性を検討するために、培養上清からのCTBおよびCTB-YVADの精製を行った。L. caseiに分泌させたCTB-YVADがGM1-gangliosideに結合したことから、申請者の予測どおり、CTB-YVADは容易にヒトおよびマウス細胞内に侵入し、caspase-1の活性化を阻害できる可能性が高い。したがって、平成24年度の研究により、新たなIBD治療薬となり得る遺伝子組換え乳酸菌を作出することができた。
本研究では、CTB-YVADの抗炎症作用を評価するために、Caco-2細胞においてLPSにより誘発されるcaspase-1の活性化、IL-1bの遊離を指標とする。また、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)の自由飲水により誘発されるマウス大腸炎の効果も検討する。平成24年度は、その前段階として、LPSのCaco-2細胞への曝露によりcaspase-1が活性化されることをその酵素活性を測定することで、IL-1bの遊離が増大することをELISA法を用いて確認した。さらに、DSSの投与により大腸炎を発症するマウスの作製に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的を達成するためには、「CTB-YVAD融合タンパク質を分泌する遺伝子組換え乳酸菌を作出する」、「精製したCTB-YVAD融合体タンパク質の抗炎症作用をin vitroで確認する」、「CTB-YVAD融合タンパク質を分泌する乳酸菌のIBDモデルマウスに対する治療効果を検討する」の3項目を実施する必要がある。本年度の研究により、それぞれの項目について、以下の結果を得ることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
「CTB-YVAD融合タンパク質を分泌する遺伝子組換え乳酸菌を作出する」:GM1-gangliosideに対する結合能を有するCTB-YVADおよびCTBを分泌する遺伝子組換えL. caseiを作出した。
「精製したCTB-YVAD融合体タンパク質の抗炎症作用をin vitroで確認する」:CTB-YVADおよびCTBを分泌する遺伝子組換えL. caseiの培養上清からのCTB-YVADおよびCTBの精製に成功した。また、精製したCTB-YVADの抗炎症作用をin vitroで評価する前段階として、ヒト腸管上皮細胞株Caco-2にLPSを曝露することで、caspase-1の活性およびIL-1bの遊離が増大することを確認した。
「CTB-YVAD融合タンパク質を分泌する乳酸菌のIBDモデルマウスに対する治療効果を検討する」:CTB-YVADを分泌する乳酸菌の治療効果を検討する前段階として、IBDモデルマウスを作製することに成功した。具体的には、6週齢の雄性C57BL/6Nマウスに5%デキストラン硫酸ナトリウムを7日間自由飲水させることで、体重減少、下痢、血便、大腸の短縮、腸管におけるミエロペルオキシダーゼ活性の増大、炎症性サイトカインの発現誘導を観察することができた。

今後の研究の推進方策

今後は、「精製したCTB-YVAD融合体タンパク質の抗炎症作用をin vitroで確認する」、「CTB-YVAD融合タンパク質を分泌する乳酸菌のIBDモデルマウスに対する治療効果を検討する」の2項目を実施する。
「精製したCTB-YVAD融合体タンパク質の抗炎症作用をin vitroで確認する」:Caco-2細胞にLPSおよび精製したCTB-YVAD、CTBを曝露し、caspase-1の活性化、IL-1bの遊離を指標に、in vitroにおける抗炎症作用を評価する。
「CTB-YVAD融合タンパク質を分泌する乳酸菌のIBDモデルマウスに対する治療効果を検討する」:平成24年度の研究成果により作製したIBDモデルマウスに、CTB-YVADを分泌する遺伝子組換えL. caseiを経口投与し、大腸炎が改善されるか検討する。

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究費として、消耗品1,950千円を使用する予定である。具体的には、電気泳動やイムノブロッティング等に必要な一般試薬に200千円を、遺伝子組換え等に必要な制限酵素等の酵素類に200千円を、細菌や細胞の培養に必要な培地成分、血清等の培地類に300千円を、イムノブロッティングやELISAに必要な抗体類に300千円を、実験用マウス購入費用に200千円を、実験に必要なマイクロチューブ、チップ、培養器具類などプラスチック器具類に300千円が必要である。その他、学会発表を行うための旅費として100千円を、実験補助のための人件費として150千円を外国語論文の校閲費や印刷費などに、200千円を試算している。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Differences in TLR9-dependent inhibitory effects of H2O2-induced IL-8 secretion and NF-kappa B/I kappa B-alpha system activation by genomic DNA from five Lactobacillus species2013

    • 著者名/発表者名
      Yukihiro Hiramatsu, Tomomitsu Satho, Keiichi Irie. et al.
    • 雑誌名

      Microbes and Infection

      巻: 15(2) ページ: 96-104

    • DOI

      doi: 10.1016/j.micinf.2012.11.003

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Expression and secretion of cholera toxin B subunit in lactobacilli2013

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Okuno, Nobuhiro Kashige, Tomomitsu Satho. et al.
    • 雑誌名

      Biological and Pharmaceutical Bulletin

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [学会発表] ヒト結腸癌由来Caco-2細胞における炎症誘発時のProgranulin発現と分泌2012

    • 著者名/発表者名
      宇高彩奈、平松征洋、佐藤朝光、椎村翔太、入江圭一、古川歩、三島健一、藤原道弘、中島幸彦、鹿志毛信広、見明史雄
    • 学会等名
      第29回日本薬学会九州支部大会
    • 発表場所
      熊本大学
    • 年月日
      2012-12-08
  • [学会発表] デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)投与により発症するマウス大腸炎の病態に関する性差

    • 著者名/発表者名
      百武美香、田村幸恵、江川さおり、入江圭一、佐藤朝光、平松征洋、上田紗織、福光由起、中島幸彦、三島健一、藤原道弘、鹿志毛信広、見明史雄
    • 学会等名
      日本薬学会 第133年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
  • [学会発表] Lactobacillus caseiのゲノムDNAに含まれる抗炎症作用を持つオリゴデオキシヌクレオチドの特定と作用機構の解明

    • 著者名/発表者名
      平松征洋、佐藤朝光、入江圭一、椎村翔太、中島幸彦、見明史雄、鹿志毛信広
    • 学会等名
      日本農芸化学会 2013年度大会
    • 発表場所
      東北大学
  • [学会発表] 乳酸菌ゲノムDNA由来の抗炎症作用を持つオリゴデオキシヌクレオチドの特定

    • 著者名/発表者名
      椎村翔太、平松征洋、佐藤朝光、入江圭一、宇高彩奈、上田紗織、中島幸彦、鹿志毛信広、見明史雄
    • 学会等名
      日本農芸化学会 2013年度大会
    • 発表場所
      熊本大学
  • [学会発表] 5種類のLactobacillus属乳酸菌由来ゲノムDNAの抗炎症作用機構に関する研究

    • 著者名/発表者名
      平松征洋、佐藤朝光、入江圭一、椎村翔太、中島幸彦、見明史雄、鹿志毛信広
    • 学会等名
      第16回腸内細菌学会
    • 発表場所
      神戸市産業振興センター「ハーバーホール」
  • [備考] 福岡大学薬学部微生物薬品化研究室ホームページ

    • URL

      http://www.pha.fukuoka-u.ac.jp/user/microbiology/web/

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公開日: 2014-07-24  

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