研究実績の概要 |
植物の傷害応答機構、特にジャスモン酸(JA)シグナル伝達機構の不活性化に寄与すると想定される、UDP-glucose非依存性糖転移酵素を明らかとする事を目的に研究を行った。この実験過程において、12-hydroxyjasmonic acid, 12-hydrohyjasmonoyl L-isoleucineの配糖化酵素として、OsBGlu1を同定した。本酵素は既に他の化合物の糖分解に関与するとの報告があり、この報告によると、花部での発現が顕著であるとの結果であった。そこで、12-hydrohyjasmonoyl L-isoleucine配糖体の花部で蓄積量を定量した所、他の部位とは全く異なる蓄積量を示し、JA配糖体化合物で一番多い蓄積量を示した。以上の事は花粉管伸長や受粉時にJAが必要であり、役目の終わったJAを代謝し、生理活性を弱めた代謝物として蓄積したと考察した。これを証明すべく、イネ幼苗の根の伸長阻害試験を行った。この結果、JAが最も伸長阻害を示し、12-hydroxyjasmonic acid および12-hydrohyjasmonoyl L-isoleucine配糖体がほとんど伸長阻害を示さなかった。以上の事から生理活性を示すJAの重要な代謝経路の一つとして、OsBGlu1が介する糖転位反応を証明できたと考える。本実験結果を固めるべく、Arabidopusis thalianaをもちいて、検証しようと計画している。以上の結果がまとまり次第、審査付き英文誌への投稿を行う。
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