研究課題/領域番号 |
24658111
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
杉本 幸裕 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10243411)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 根寄生植物 / ストライゴラクトン |
研究概要 |
ストライゴラクトン(SL)の生産を調べるために、様々な根寄生植物個体を調製した。ショ糖と寒天を加えたGM培地に、あらかじめ表面殺菌した種子を播き、さらに合成SLであるGR24を添加することで、Striga hermonthicaの無菌独立個体を作出した。インキュベータ内で独立個体を1か月以上維持し、5 cm程度まで生育させることができた。ホルモン、温度、光等の条件を検討したが、それ以上の栽培は困難であった。宿主に寄生した個体については、S. hermonthica種子を含む土壌を充填したプラスチックポットでソルガム品種DabarおよびSudaxを栽培してS. hermonthica個体を得た。また、野外でアカクローバーに寄生しているOrobanche minorの個体を採集した。 根寄生植物個体のアセトン抽出物を粗分画後LC-MS/MSに供し、含まれるSLを分析した。S. hermonthicaの独立個体からはストライゴラクトンは検出されなかった。5-Deoxystrigol(5-DS)の蓄積のみが確認されているソルガム品種Dabarに寄生させたS. hermonthicaからは5-DSのみが、5-DSに加えてsorgomolが確認されているソルガム品種Sudaxに寄生させたS. hermonthicaからは5-DSとsorgomolが検出された。このように、S. hermonthicaに関しては、根寄生植物がSL生産能を欠失しているという仮説を支持する結果を得た。一方、自生していたアカクローバーの根とそれに寄生していたO. minorからSLを抽出して分析を行った結果、アカクローバーの根からはorobanchyl acetate が検出されたが、O. minorからSLは検出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既知の天然SLおよびその立体異性体の多くを合成し、それらの高感度分析系を確立した。根寄生植物の独立培養系は、S. hermonthicaについては確立したものの、長期的な栽培には成功していない。その他のStriga属やOrobanche属植物の独立培養は未だ成功していない。根寄生植物のSL生産能の有無を分析的に明らかにするという点では、S. hermonthicaについてのみ目標を達成しているが、知見の普遍性を高めるためにさらなる独立培養系の確立を図る必要がある。独立個体はSLの有無による根寄生植物個体の形態を観察するためにも有用である。その場合、すでに確立しているS. hermonthicaについて、発芽誘導に用いたGR24を含まない環境に移して栽培することが必要となるが、寒天培地で作出した個体を移植することは容易ではない。この点を改良するため、水耕あるいはロックウールを支持体に用いた培養系の検討を進めている。SL供給の有無による根寄生植物の形態変化を観察する新たな実験系として、SL生合成能力を欠失した変異体の利用も検討している。
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今後の研究の推進方策 |
根寄生植物のSL生産能の検証について基本的に二種類の戦略を構想している。一つは独立個体を作出して分析することであり、もう一つは、宿主植物に寄生させた個体を宿主とともに分析することである。前者はS. hermonthicaについては達成できたものの、O. minorをはじめとして他の根寄生植物の独立個体の作出は困難に直面しているため、さらなる検討を続けていく。後者については、様々な宿主-寄生植物の組み合わせが報告されており、ソルガム-S. hermonthica、アカクローバー-O. minorについては分析を終えた。今後、シロイヌナズナ-Phelipanche aegyptiacaやササゲ-S. gesnerioidesなどについても調べていく。また、アサガオ-S. gesnerioides、ヒマワリ-S. gesnerioidesのように、これまでに報告されている以外にもいくつかの植物間で寄生関係が成立することを見出しているので、それらについても、SLを分析する対象とする。 根寄生植物がSLを生産していなければ、宿主から供給されるSLによって個体の形態が影響を受けている可能性がある。これを検証するために独立個体の利用を考えてきたが、これまでのところS. hermonthicaについてしか確立できておらず、それも長期にわたる栽培は困難である。移植が容易でSLの影響を確かめやすい水耕の系の確立を目指したい。並行して、SL生合成欠損変異体の活用を検討している。S. hermonthicaの宿主となるイネではSL生合成欠損変異体としてd10、d14、d17が、P. aegyptiacaの宿主となるシロイヌナズナはmax3、max4が利用できる。これらに寄生させた根寄生植物個体の形態に及ぼす様々なSLの効果を調べていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品の導入は予定しておらず、研究費の約半分を物品費として消耗品の購入に充てる。多くは、ストライゴラクトン分析に必要となる高速液体クロマトグラフィ用のカラムと溶媒の購入に充てる。植物材料の調製のための支援者雇用に100千円を見込んでいる。旅費は、国内外で開催される学会で成果を発表するために355千円を充てるほか、関連分野の研究者との打ち合わせのために45千円を充てる。成果を論文に取りまとめる際に英文校閲を受けるための費用を100千円見込んでいる
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