研究課題
われわれの味覚は摂食・栄養状態によって変化する。この生理現象については、近年のいくつかの研究報告によって、摂食行動の制御に働くホルモン・低分子のいくつかが、味受容細胞に直接作用して、味覚感受性を修飾・変化させていることが明らかになってきたが、不詳な点が多く残っている。本申請研究では、①これらの研究で示された他に摂食・栄養状態のシグナルとして味覚感受性を変化させる因子があるのか、さらには、②味受容細胞内では、どのような分子機構で味覚受容システムが修飾され、味覚感受性が変化するのか、について解明することを最終目標としたものである。本年度はまず、絶食・摂食による味覚感受性変化の解析を行った。リッキング法 (Brief Access Test) によって味覚感受性変化を解析する条件の検討を行った。絶食と摂食という2つの状態間でリッキング法によって評価する方法は前例がなく、様々な条件を検討し、条件を決定した。決定した条件を用いて基本味を呈する溶液に対する嗜好性変化を解析したところ、一部の味溶液に対する嗜好性が変化することを示唆する結果を得た。一方、味受容細胞に作用し、その細胞応答強度を修飾すると報告されているインスリンの味覚感受性変化への寄与を明らかにするために、db/dbマウスについても絶食・摂食状態で味覚感受性変化の解析を試みた。しかし、db/dbマウスではリッキング法の最適条件を確立することが出来ず、各個体によって最大リック数が大きくバラつき、その味覚感受性変化を明らかにすることが出来なかった。リッキング法などの行動生理学的解析は困難であり、他の解析手法が必要であると想定された。味覚感受性変化に相関する遺伝子発現変化を明らかにするためトランスクリプトーム解析を行なっている。本年度はRNA抽出およびターゲットRNA調製の条件検討を行い、条件を確立した。
3: やや遅れている
味覚感受性変化解析およびトランスクリプトーム解析における条件検討に時間を費やした。
トランスクリプトーム解析を早期に行い、その解析結果を元に遺伝子発現変化の組織化学的解析を実施する。味覚感受性変化に関わる候補遺伝子の欠損マウスが入手可能な場合は、これを生体レベルでの検証を行う。
交付申請時の計画と同様に使用する。繰越分は消耗品に使用する。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (2件)
J. Comp. Neurol.
巻: 521 ページ: 1781-1802
10.1002/cne.23256
Biochem. Biophys. Res. Commun.
巻: 431 ページ: 437-443
10.1016/j.bbrc.2012.12.150.
Biosci. Biotechnol. Biochem.
巻: 76 ページ: 1182-1188
10.1271/bbb.120063
生物の科学 遺伝
巻: 66 ページ: 643-648
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/biofunc/
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2013/20130415-1.html