研究課題
われわれの味覚は摂食・栄養状態によって変化する。この生理現象については、近年のいくつかの研究報告によって、摂食行動の制御に働くホルモン・低分子のいくつかが、味受容細胞に直接作用して、味覚感受性を修飾・変化させていることが明らかになってきたが、不詳な点が多く残っている。本申請研究では、①これらの研究で示された他に摂食・栄養状態のシグナルとして味覚感受性を変化させる因子があるのか、さらには、②味受容細胞内では、どのような分子機構で味覚受容システムが修飾され、味覚感受性が変化するのか、について解明することを最終目標としたものである。本年度は、絶食時と摂食時とにおける味蕾細胞の遺伝子発現プロファイルの比較を行った。マウスを2群に分け、自由摂食群と20時間絶食群とを設定した。各群のマウスから昨年度確立した条件で有郭乳頭上皮の採取を行った。自由摂食群に較べ、20時間絶食群の有郭乳頭上皮は剥離が困難であった。これについては絶食による影響、もしくは、絶食によって摂水量が減ったことによる影響が考えられた。各有郭乳頭上皮からtotal RNAを抽出し、マイクロアレイ解析に供した。その結果、自由摂食群に対して20時間絶食群では、味覚受容体遺伝子群が発現増加している傾向が観察された。また一方で、細胞増殖や細胞分化、細胞骨格形成に関わる遺伝子群の発現は低下している傾向が観察された。このことから、絶食時には味覚受容体遺伝子の発現増加によって、味覚感受性を増強するという機構の存在が示唆された。そして、絶食状態にある、つまり、栄養素の供給が絶たれている状態にあるときには、味蕾細胞(上皮細胞)の増殖や分化、形成が抑制されることが示唆された。
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