研究課題/領域番号 |
24658116
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
戸塚 護 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70227601)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 制御性B細胞 / IL-10 / プロバイオティクス / フィトケミカル |
研究概要 |
過剰な免疫応答を負に制御する機能をもつ制御性B細胞(Breg)をターゲットとして、食品由来成分からその分化誘導、活性化を促進する働きのあるものを見いだすことを目的として研究を行った。まず、食品成分がBregの分化誘導に与える影響を検討するための実験条件を検討した。BALB/cマウス脾臓由来B細胞をリポ多糖(LPS)あるいはCpGオリゴヌクレオチドで刺激することでIL-10の産生が誘導された。また、乳酸桿菌(Lactobacillus gasseri)および乳酸球菌(Lactococcus lactis)の生菌および加熱処理死菌体の添加によっても、IL-10産生の誘導が認められた。このことより、プロバイオティクスがBreg誘導活性を有することが示唆された。10 μgのLPS存在下、様々な食品由来成分を添加して脾臓由来B細胞を培養したところ、フラボノイドであるケンフェロールおよびタマリキセチンの添加により濃度依存的にIL-10産生が増加することが明らかとなった。フローサイトメトリーにより細胞内IL-10発現を解析した場合にも同様の結果が観察された。一方、濃度依存的にIL-10産生を低下させるポリフェノールの存在も認められた。ケンフェロールおよびタマリキセチンの添加で増加したIL-10産生は、芳香族炭化水素受容体(Aryl Hydrocarbon Receptror; AhR)のアンタゴニストであるCH223191の添加により低下したことより、この現象にAhRが関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食品成分による制御性B細胞(Breg)の分化誘導促進活性をin vitroで解析する実験系を確立することができた。また、乳酸菌などのプロバイオティクスがBreg誘導活性をもつことが示唆された。さらに、食品成分の検索により、ケンフェロールおよびタマリキセチンがBreg誘導を促進する活性を有することを明らかにした。Breg誘導促進活性を示す低分子化合物の存在はこれまでに国内外で報告例はなく、新規の発見と言える。この両化合物の働きについては、学会発表も行った。
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今後の研究の推進方策 |
本年度明らかにした制御性B細胞(Breg)の誘導を促進するポリフェノールの作用機作について解析を行う。一方、IL-10産生を抑制したポリフェノール、すなわちBreg誘導を抑制するものについてもその作用機作の検討を行う。また、これらのポリフェノールのin vivoにおける働きを解析する。さらに、本年度Breg誘導促進活性を検討出来なかったビタミン、アミノ酸、ペプチドなどについても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画ではフローサイトメトリーによりB細胞の表面分子の発現状態を解析する予定であったが、その解析にまで至らず、各種抗細胞表面分子抗体と関連試薬の購入のための研究費の執行が行えなかったため、次年度に使用する予定である。
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