我々は、絶食時の褐色脂肪組織における遺伝子発現応答をmRNAレベルで網羅的に解析することにより、多くのユビキチン-プロテアソーム関連遺伝子が発現上昇することをこれまでに見出している。本研究では、絶食時にユビキチン化の標的となる分子を同定することにより、絶食応答における特異的なタンパク質分解によるエネルギー代謝の調節機構を解明することを目的として研究を行った。Wistar 系 7 週令雄ラット10 匹に、5日間の馴化後、7 日間、毎日10 時から16 時の間のみ通常飼料を自由摂取させる制限給餌を行った。本飼育8 日目の10 時に平均体重が同程度となるように2 群に分け、16 時まで1 群には同様に餌を与え、もう1 群は絶食とした。プロテアソーム阻害剤であるエポキソマイシンの投与量、投与法を検討した結果、本飼育7日目の16時に、80マイクログラム/Kg体重(溶媒は生理食塩水)で、イソフルラン吸入麻酔下で褐色脂肪組織直上の皮下に投与することで、ユビキチン化タンパク質の量に2群で差が認められることがわかった。一方、エポキソマイシンを投与するタイミングを、8日目の13時とすることで、絶食状態から摂食状態に遷移する際にユビキチン化されるタンパク質の検出もできそうであることもわかった。現在、ユビキチン化タンパク質をユビキチン化タンパク質結合レジンによって濃縮し、イソペプチダーゼを用いて切り出して検出する条件を検討している。条件が至適化できた段階で、2次元電気泳動によるユビキチン化タンパク質の同定を行う予定である。
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