研究課題
H24年度において、研究代表者らは、マウス肝臓における新規脂肪合成の律速酵素であるGPAT1遺伝子のプロモーター領域が、新規メチル化酵素Dnmt3bによるDNAメチル化により発現制御をうけることを見出し、報告した(Diabetes 61:2442-2450, 2012)。一方、新規メチル化酵素にはDnmt3aも存在するが、両者の基質特異性には不明の点が多い。さらに本研究では、DNAメチル化の網羅的解析法であるMIAMI法(Oncogene 25:3059-3064, 2006)の確立を試みた。新規DNAメチル化酵素にはDnmt3aとDnmt3bが存在するが、両者の基質特異性には不明の点が多い。本研究では、Dnmt3bとDnmt3aを過剰発現したマウス肝臓初代培養細胞を用いてゲノムワイドにDNAメチル化変化を解析した。アデノウイルスを用いてGFP(Ad-G)、Dnmt3b(Ad-3b)あるいはDnmt3a(Ad-3a)をマウス肝臓初代培養細胞に過剰発現し、MIAMI法によりゲノムワイドなDNAメチル化変化を解析した。Ad-3b過剰発現とAd-3a過剰発現ではAd-3bによるDNAメチル化作用の方が強いことがバイサルファイト法により確認された。バイオインフォマティクス解析したところ、Dnmt3b特異的遺伝子ではCANAGCTGの配列が、Dnmt3b とDnmt3aの両者によりメチル化される遺伝子ではCCGGWNCSCの配列が濃縮されていることが明らかになった。肝細胞ではDnmt3bが主要なDNAメチル化酵素であり、肝臓における遺伝子発現に制御に関与することが示唆された。さらに、この網羅的なメチル化解析法を用いて、親獣に栄養環境変化を与えた場合の産仔の肝臓のDNAメチル化解析を行なっており、生活習慣病に関連する表現型の解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題は動物個体を用いたin vivoの解析と培養細胞を用いたin vitroの解析の両者を施行している。動物個体のサンプルは冷凍庫の故障により不活性化し、再度実験を行なっているため、若干の遅れが出ている。一方、in vitroの解析は当初の計画以上に進展しており、全体としては概ね順調に進展している。
本研究課題は、当初の研究計画に関して現時点で特に変更はない。次年度以降、着実に成果を報告していきたい。
In vivo(マウス)およびIn vitro(培養細胞)の両面から解析を行なう。そのため、研究費は分子生物学的な試薬類およびマウス飼育関連消耗品等に主に使用する予定である。
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Biochem Biophys Res Commun
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Diabetes
巻: 61 ページ: 2442-50
22721968