研究課題/領域番号 |
24658123
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
長岡 伸一 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (30164403)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 食品機能 |
研究概要 |
本研究は、様々な抗酸化物質や食品が活性酸素の一つである一重項酸素を消滅させる能力を評価する実用的で汎用的な方法(Singlet Oxygen Absorption Capacity (SOAC法)および同様にフリーラジカルを消滅される能力を評価する方法(Aroxyl Radical Absorption Capacity (ARAC法)の開発を行い、新たな食品の抗酸化活性の分析方法として確立することを目的とする。申請書ではフリーラジカル消滅能力評価法をNovel Oxygen Radical Absorption Capacity (NORAC法)と命名したが、アメリカ農務省がORAC法から撤退したので名前の縁起が悪いため、ARAC法に名称を変更した。 1.SOAC法の高度化 汎用性が高くて効率の良いSOAC法の開発を進め、新しい種々の機能が明らかにされて注目されている天然抗酸化剤トコトリエノールなどとパーム油抽出物などの各種食品に適用し、一重項酸素消滅能力SOAC値を評価中である。本研究によって、フード・アクション・ニッポンアワード研究開発・新技術部門最優秀賞をカゴメ株式会社と共に愛媛大学理学部が機関受賞した。 2.ARAC法の開発 ストップトフロー法を用いて抗酸化剤や食品のフリーラジカル消去活性ARAC値を評価する方法を開発した。フリーラジカル消去速度のみならず、一般に用いられている半減期を使ってもARAC値を求められることが分かった。フリーラジカルのモデルとしてアロキシルラジカル、DPPH、ガルビノキシル、ニトロニルニトロキシドを試したが、アロキシルラジカルが最も適していることが分かった。相対的なARAC値の傾向は、測定方法や媒質を変えても変化しなかった。また、金属イオンが共存する場合の影響についても明らかにした。さらにサプリメントの原料等のARAC値も求めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.SOAC法の高度化:フード・アクション・ニッポンアワード研究開発・新技術部門最優秀賞をカゴメ株式会社と共に愛媛大学理学部が機関受賞したので、当初の計画以上に進展していると言える。 (1)様々な天然抗酸化剤のSOAC法による一重項酸素消滅能力の評価:トコトリエノールなどの天然抗酸化剤に留まること無く、パーム油にまでSOAC法を適用しており、当初の計画以上に進展している。 (2)汎用性が高くて効率の良いSOAC法の確立:一度に多数のサンプルの分析を短時間で行うことができるように分光装置を改良しており、おおむね順調に進展している。 2.ARAC法の開発:原著論文1報、解説1報が掲載され、原著論文1報を執筆中であるので、おおむね順調に進展していると言える。 (1)ARAC値を測定する方法の開発と代表的抗酸化剤のARAC値の測定:用いるフリーラジカルの種類、媒質の検討を行うと共にビタミンE関連分子のARAC値を得ているだけではなく、金属イオンが共存する影響についても評価しており、当初の計画以上に進展している。 (2)食品への予備的な応用とARAC値を食品表示できるかどうかの検討:エーザイ株式会社が販売している贅沢ポリフェノールの原料であるミックスポリフェノールにARAC法を適用し、食品表示できる可能性があることが分かったので、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1.SOAC法の応用とデータベース化 現在進めているパーム油のSOAC値の評価を纏め、米ぬかなど他の食品にも応用範囲を広げる。論文にSOAC値が蓄積されつつ有り、今後さらに対象を拡大して26年度以降にデータベース化を目指す。 2.ARAC法の高度化と応用 SOAC法と同様に、様々な天然抗酸化剤のARAC法によるフリーラジカル消去能力の評価、汎用性の高い方法の確立、各種食品への本格的な応用とデータベース化を行う。 3.SOAC法とARAC法の統合 SOAC法とARAC法を統合して総合的な食品の抗酸化活性評価方法とすることを目指す。食品が一重項酸素を消滅する能力とフリーラジカルを消滅させる能力とは直接比較できなければならないが、SOAC法とARAC法とは共にサンプルとα-トコフェロールの反応速度との比を指標としているので比較が容易で有り、統合に適している。今年度の結果に基づいて、農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業における「シーズ創出ステージ」に応募している。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、抗酸化反応の測定のための試料、装置の高度化用の部品、成果発表のための旅費、合成と測定のための研究員を雇用する賃金などの費用が必要である。 特に本研究には熟練した人員が必要で有るので、主として博士研究員を雇用する経費に次年度の研究費を使用することを計画している。また、高価な抗酸化剤、学会発表のための旅費などの使用を計画している。
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