研究課題
本研究では、申請者独自の技術であるマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI-MS)を基盤とする微量細胞から高感度に代謝物を検出する手法を先鋭化し、技術的ボトルネックとなっていた計測可能な(イオン化可能な)分子種の網羅性、測定感度や精度を向上させた代謝物解析法を開発することを目的としている。前年度に続き、MALDI法の「計算的に予測可能な」理解を目指し、イオン化の可否やイオン収率に影響を与える代謝物構造の要因を定量的構造物性相関(QSPR)の手法により調査した。主要な生体内代謝物200種について9-aminoacridine(9-AA)をマトリックスとしてMALDI-MS分析を行い、そのイオン化の可否および検出限界濃度を評価した。また、各代謝物の構造情報から分子記述子を算出し、実験結果を予測するモデルをランダムフォレスト法により構築した。その結果、代謝物のイオン化の可否やイオン収率に関与する有用な構造情報の抽出が可能となった。このようなQSPR法は従来にない理論的なマトリックス開発戦略の新たなアプローチとなることが示唆された。本研究で見出された有用なマトリックスを用いて、微量細胞からの高感度かつハイスループットに食品因子応答性代謝プロファイルの取得にも成功した。興味深いことに、本研究のメタボローム解析から、食品因子が標的とし得る動物細胞内の新たな酸化ストレス応答機構(新規ミトコンドリア制御機構)の存在を明らかにすることにも成功した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 3件)
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