研究概要 |
申請者らは,母乳中には食物アレルゲンが特異的IgAとの免疫複合体として存在していることを発見し,「母乳は本来食物アレルギ ー予防の天然の飲むワクチンである」との独創的仮説を立て,これまでにこれを支持する結果を蓄積してきた。本研究ではこの仮説の 応用として,動物にアレルゲンとIgAとの免疫複合体を投与し,経口免疫寛容が誘導されるか否かを調べることにより,新たなドラッ グデリバリーシステムの構築,アレルギー予防法・治療法の開発を目指している。本年度は昨年の成果に基づき,仮性IgA免疫複合体の投与実験とプロバイオティクの効果について検討した。 [結果1]当研究室で確立したマウスモノクローナルIgAに食物アレルゲンとして卵白オボアルブミンを化学的に結合させ仮性免疫複合体を調製した。これをマウスに経口投与したのち,そのマウスにおけるオボアルブミンに対するIgE産生,アレルギー性下痢誘発に対する影響を解析した。仮性複合体投与による両者の抑制傾向はみられたが,統計的に有意な効果を出すに至らなかった。今後条件を整えて再実験したい。 [結果2]昨年度選択した,マウス脾臓細胞培養系においてIgA産生を活性化する乳酸菌を母マウスに経口投与した結果,母乳中のIgA免疫複合体が増加し,その母乳を飲んだ仔マウスの母乳による経口免疫寛容が補強された。この結果,雑食性のヒトにおいても母親に対するプロバイオティクス手法により母乳の寛容誘導効果を補強できることが明らかとなった。
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