研究課題/領域番号 |
24658129
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
福田 真嗣 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特任准教授 (80435677)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 腸内環境 / メタボローム / オミクス / プレバイオティクス / オリゴ糖 / プロバイオティクス / 機能性食品 |
研究概要 |
食生活の欧米化とともに、我が国でもメタボリックシンドロームや大腸がん、アレルギーや炎症性腸疾患は増加の一途をたどっている。しかし、医療費は削減傾向にあり、加えて更なる少子高齢化社会を迎えることからも、予防医学や健康増進の見地に立った機能性食品などによる‘セルフメディケーション’ は今後その重要性が増すことは明らかである。プレバイオティックオリゴ糖のうち、フラクトオリゴ糖(FOS)は、腸内環境の恒常性維持に寄与することが知られており、腸内細菌叢の変動を通じて宿主免疫系に作用することで疾患の予防あるいは改善をするとされている。しかしながら、FOS摂取がどのような作用機序で宿主の健康維持や疾患の改善に関わっているのか、すなわちFOS摂取における宿主-腸内共生細菌間相互作用の詳細は不明であった。そこで本年度はマウスモデルを用いて、FOS摂食時における腸内環境変動について、マルチオーミクス解析手法を用いたアプローチを行った。 核磁気共鳴装置(NMR)を用いた腸管内容物中代謝産物のメタボローム解析結果から、FOS摂食開始直後は腸管内でFOSが代謝されずにそのまま糞便中に排出されることが明らかとなった。しかし、FOS摂食24時間後からはFOSが腸管内で代謝され、それに伴って腸内共生細菌が産生する短鎖脂肪酸量が増加することも明らかとなった。次世代シーケンサーを用いた腸内共生細菌叢の網羅的解析結果から、FOS摂食に伴って変動する特徴的な腸内共生細菌群を見出した。腸管内代謝産物変動および腸内共生細菌群変動の相関解析の結果から、FOS摂食による腸内環境変動の主要因子として、特定の細菌群による代謝変動が大きく寄与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は研究計画書のスケジュール通りに、マウスモデルを用いたFOS摂食試験を行い、マルチオーミクス解析技術に基づく腸内環境情報の取得を行った。NMRを用いた腸管内代謝物のメタボローム解析、次世代シーケンサーを用いた腸内細菌叢の網羅的解析、DNAマイクロアレイチップを用いたマウス腸管上皮細胞のトランスクリプトーム解析を実施した。各々の階層における統計科学的解析に加えて、次年度に実施予定だった多階層の統計科学的解析も一部実施した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の方針は、当初の研究計画書通りに、マウスモデルを用いた動物試験で得られた腸内環境に関する網羅的情報について統計科学的解析手法を適用し、腸内共生細菌と宿主腸管細胞の異種生物間ネットワークを構築する。異種生物間ネットワークにおけるギャップを埋めるために、マウスモデルを用いたFOS摂食動物試験も再度並行して行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験結果に基づきながら試験を進めているため、本年度使用予定だった消耗品費を一部次年度に繰り越した。次年度の研究費の使用計画は、FOS摂食マウスの免疫学的解析に用いる消耗品費や、得られた研究成果の学会発表のための旅費、研究成果の論文雑誌への投稿費として使用予定である。
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