研究概要 |
ブナの塩基配列情報の精緻化を目的として、ブナのゲノムDNAの塩基配列を次世代シーケンサー(Hiseq 2000, イルミナ社)で網羅的に解読して、ドラフトゲノムの構築と遺伝子推定を行った。昨年度実施したPair-end用200 bp, 500 bp, 800 bpとMate-pair用の2 kb, 5 kbの5種類に加えて、本年度は10Kbライブラリーを構築してMate-pairシーケンスを行った。その結果、推定された遺伝子の数は48,618個で、その遺伝子の塩基配列が決定された。この遺伝子数は、ブナ目の近縁にあたるバラ目バラ科のチュウゴクナシ(Pyrus bretschneideri)の42,812個やキントラノオ目ヤナギ科に属するブラックコットンウッド(ポプラ;Populus tricocarpa)の45,555個と近い数であり、ブナのドラフトゲノムは概ね良好に構築されたと考えることができた。 現有のブナのDNAマイクロアレイの汎用性を検討する一環として、ブナの地理的な種内変異に対する適合性を検討した。昨年度までの北海道の日本海側型のブナと神奈川県で太平洋側型のブナに加えて、富士山ブナ林(太平洋側型)4ヶ所からの供試葉を対象に、DNAマイクロアレイを用いたゲノム網羅的な遺伝子発現解析を行った。両地域のブナに対して解析が可能であることを確認できた。したがって、北海道のブナのゲノム塩基配列に基づいて開発されたDNAマイクロアレイのプローブは、ブナの地理的な遺伝変異に対しても適合して全国で広く利用が可能であると考えられた。
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