自然生態系では、80%以上の種子植物が菌根菌と共生しており、複数の植物個体が菌根菌の菌糸によって結ばれ、菌根菌ネットワーク(common mycorrhizal networks,CMN)が形成されている。本研究課題は、一つの植物個体でストレスに対する防御応答シグナルが、菌根菌ネットワークを経由して隣接する植物個体へ転送されるか、それによって隣接個体のストレスの抵抗性が向上するかどうかを明らかにするため、単純化した実験系での解析を行う。共通の菌根菌に感染させた一組の植物個体の一方にストレスや防御シグナル処理を行い、もう一方の植物個体内の防御シグナルや誘導される防御タンパク質遺伝子発現を経時的に定量する。ストレスに対する植物の防御応答シグナルが菌根菌ネットワークを介して伝達されるかどうかを明かにしようとするものである。 平成24年度に、外生菌根菌 P. tinctoriusとC. geophilumに感染した6カ月のアカマツに、それぞれ、Cu(0、100、500、1000 mg/kg)とNaCl(0、50、100 mM)を処理した結果、それぞれの処理でアカマツ葉のSA、JAとET含量の差が見られなかった。 平成25年度に、外生菌根菌 P. tinctoriusとC. geophilumに感染したアカマツと非感染のアカマツを重金属ストレス下(Cu、Zn、Cd)において生育させ、ABA添加の影響を調べた。また、菌糸培養実験系を用いて50種の外生菌根菌について、それぞれの重金属ストレス下(Cu、Zn、Cd)におけるABAの影響を調べた。
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