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2012 年度 実施状況報告書

シカ食害を排除しても森林生態系の窒素吸収能が回復しないのはなぜか?

研究課題

研究課題/領域番号 24658136
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関京都大学

研究代表者

吉岡 崇仁  京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (50202396)

研究分担者 松山 周平  京都大学, フィールド科学教育研究センター, 研究員 (30570048)
徳地 直子  京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60237071)
福島 慶太郎  京都大学, フィールド科学教育研究センター, 研究員 (60549426)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード森林管理 / シカ食害 / 森林土壌 / 窒素循環 / 森林植生
研究概要

ニホンジカの採食による森林植生の変化が水質浄化機能に及ぼす影響を調べるため、①フィールドで集水域内の森林植生と渓流水質の関係を比較すると共に、②植栽樹種の組み合わせが異なる鉢植えを異なる森林植生とみなし、鉢植え栽培実験による実験的検証を行う。本年度は、フィールド調査に着手したとことに加え、栽培実験の準備を整えた。
京都大学フィールド科学教育研究センター芦生研究林内にある2つの集水域(ウツロ谷、キエ谷)を調査区とし、下層植生の被度調査と月1回の渓流水の採水を行った。ウツロ谷とキエ谷は、面積がほぼ同じで隣り合う集水域であり、地質、微気象、元来の植生がほぼ同じとみてよいが、ウツロ谷は集水域を防鹿柵で囲んでおり、シカ不嗜好種が多いもののシカ嗜好種も生育するのに対し、キエ谷には防鹿柵はなく、シカ不嗜好種がほとんどである。そのため、この2つの集水域で渓流水質に違いがあった場合、水質の違いは森林植生の違いに起因する可能性が高い。
栽培実験は同センター北白川試験地にて実施する予定であり、本年度はその準備にあたった。シカ嗜好種6種(ブナ、コハウチワカエデ、イヌツゲ、クロモジ、コアジサイ、ヤマアジサイ)とシカ不嗜好種6種(スギ、アセビ、エゾユズリハ、ヒサカキ、オオバアサガラ、コバノイシカグマ)の苗木を各種60株ずつ用意し、4種ずつ選んで1つの鉢に混植した(合計180鉢)。シカ不嗜好種の割合が100%、50%、0%となるように混植し、鉢から土壌と土壌水を採取できるようにした。そのため、シカ不嗜好種の割合と土壌・土壌水の特性を比較することで、植生がシカ不嗜好種のみで構成された場合に渓流水質が悪化するのかどうかを検証することが出来る。次年度には土壌水・土壌の採取と植物のフェノロジー調査を開始する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画では、①フィールドで森林植生と渓流水質との対応の調査、②苗畑での栽培実験による検証、③森林での移植実験によるより実証的な検証を予定していた。研究資金・人的資源の投入による効果の点から、①と②の2つの研究を中心に進め、その成果を踏まえて③に着手するのが効率的である。そこで、研究計画1年目の平成24年度は、フィールド調査・試料採取と苗畑実験の準備を中心に取り組んだ。
フィールドに関しては、芦生研究林内のウツロ谷(シカ排除区)、キエ谷(対照区)の実験集水域において、下層植生調査と渓流水の定期採取を実施した。データの整理は終了していないものの、必要な試料は採取できており、水質分析も進行中である。したがって、次年度以降に解析を進めることができる状態にある。また、苗畑での栽培実験に関しては、シカが嗜好する植物と嗜好しない植物の苗を購入し、鉢に混植して栽培を開始した。次年度から土壌・土壌水試料の採取と栄養塩類の測定を開始することができる。これらのことから、概ね計画通り進展していると判断できる。

今後の研究の推進方策

平成25年度は、フィールド調査を継続するとともに、24年度に採取した渓流水の分析と植生データの整理を進め、データ解析を開始する。苗木の栽培実験では、土壌及び土壌水の採取、フェノロジー特性の測定を実施する。土壌・土壌水の分析にあたり、当初は化学分析による評価のみを考えていたが、土壌微生物のゲノム解析の予備研究から特定の機能集団について調査することが有効であることが示唆されたため、本研究では、窒素栄養塩動態に深く関与する硝化細菌のゲノムの定量も評価項目に加え、生物・化学の2つの側面から土壌と土壌水を分析することにした。土壌・土壌水の採取は4ヶ月に1度行う。フェノロジー特性の測定は2週間毎に行う。

次年度の研究費の使用計画

「次年度使用額(約155,000円)」は、水質分析機器の共同利用頻度が高いことから本研究で占有できる時間が少なかったことから、年度終了時までに分析を終了することができなかったことなどが原因で生じたものである。25年度の予算と合わせて研究費は主に採取した土壌・土壌水の分析のための試薬、分析機器消耗品の購入に充てるほか、栽培実験の消耗品、フィールド調査のための旅費、成果発表のための学会参加旅費にも利用する。25年度には、前年度に採取済みの試料の分析から実施する予定であり、「次年度使用額」相当分は、年度当初に分析試薬等の消耗品購入で使用する計画である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 冷温帯スギ人工林の間伐林・未間伐林における土壌細菌群集の比較

    • 著者名/発表者名
      松山周平・福島慶太郎・河村耕史(大阪工大)・鈴木伸弥・吉岡崇仁
    • 学会等名
      日本森林学会第124回大会
    • 発表場所
      岩手大学、盛岡
  • [学会発表] Deer-induced degradation of understory vegetation affects N retention and loss in forested watershed

    • 著者名/発表者名
      Keitaro Fukushima, Masaru Sakai, Shota Sakaguchi, Yuka Iwai, Momoko Sakai, Atsushi Hasegawa, Yuhei Nishioka, Hiroaki Fujii, Naoko Tokuchi, Takahito Yoshioka and Atsushi Takayanagi
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2013年大会
    • 発表場所
      幕張メッセ、幕張

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公開日: 2014-07-24  

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