研究課題/領域番号 |
24658136
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉岡 崇仁 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (50202396)
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研究分担者 |
松山 周平 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 研究員 (30570048)
徳地 直子 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60237071)
福島 慶太郎 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 研究員 (60549426)
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キーワード | 森林管理 / シカ食害 / 森林土壌 / 窒素循環 / 森林植生 |
研究概要 |
スギ、ブナ、コハウチワカエデ、クロモジ、オオバアサガラ、アセビ、ヒサカキ、イヌツゲ、エゾユズリハ、ヤマアジサイ、コアジサイについて、稚樹の窒素吸収能をポット実験にて明らかとし、混植した場合の効果についても考察した。その結果、1)オオバアサガラは単一種で生育する場合には高い窒素吸収能をもつものの、他種と一緒に生育する場合には窒素吸収能は弱められる、2)スギ、ブナ、ヤマアジサイでは、単一種で生育した場合は、窒素吸収能が弱いにもかかわらず、他種と生育する場合には高い窒素吸収能を示した。シカの選好性が異なる植物の窒素吸収能に種特性があり、種間相互作用の可能性も示唆された。森林の窒素吸収能の維持・向上には、特定種の導入や植生の多様性を高める方法の開発も有効であると考えられる。 防鹿柵で囲った集水域とそれに隣接する対照集水域での調査では、下層植生は、土壌中の硝酸態窒素を吸収することにより、系外への窒素流出を抑制することが明らかとなった。その季節性は,優占種のバイオマスが大きいほどその種の消長に強く依存し,バイオマスが小さいが多様な種が存在すると硝酸塩の流出が年間を通じて低く抑えられる可能性が示された。シカによる植生の衰退は,バイオマスの減少や多様性の変化を通じて,土壌の窒素保持プロセスに作用し,系外への窒素流出パターンを規定することが分かった。 窒素栄養塩動態に関わるアンモニア酸化微生物(AOM)のゲノムの定量を行った。2013年度は、スギ人工林における間伐の有無がAOMの量に及ぼす影響を評価した。その結果、未間伐林ではアンモニア酸化古細菌の数は観測期間中に減少したが、間伐林では、間伐後に増加していた。一方、アンモニア酸化細菌の数は、未間伐林と間伐林のいずれでも有意な変化は認められなかった。シカの有無によるAOMのバイオマスに影響する因子については、今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
稚樹のポット植栽実験では、単一植栽の場合と複数種を混植した場合とで、土壌窒素濃度に与える効果が異なる可能性が見られたが、これは当初には想定していなかったものである。窒素栄養塩類を廻る種内・種間競争が複雑に関係しているものと考えられるが、今後の実験、解析の方向性が示唆される結果となった。渓流調査についても、情報の蓄積を順調に進めることができたと判断している。土壌微生物群集については、窒素動態に関わる微生物に的を絞った。明瞭な結果は得られていないが、今後につながる基礎データは取ることができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画最終年度に当たり、植栽実験とシカ排除実験を中心として推進する。 植栽実験については、1)現状の鉢植えをつかって、土壌水の採水・分析とバイオマス測定を行う。窒素栄養塩濃度の種間差、混植した場合の鉢間差と種構成の関係に苗サイズを加えて解析し、25年度の結果を補強する。2)追加の実験として、挿し木苗を使い屋内で人工照明・水耕栽培にて混植栽培を行い、栄養塩の動態を解析する。データについては、適切なモデルを応用することも考えたい。 シカ排除実験については、渓流水質の経時変化の調査を継続するとともに、シカ食害の影響を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が発生した主な理由は、実験圃場及び室内における混植実験に傾注したため、シカ排除実験地調査に関する経費を初期に予定した額で支出することができなかったためである。また、学部・院生に各自の研究課題として取り組ませたほか、共同研究者の協力があった。次年度最終年度に経費を残すことが、研究のとりまとめに有効であると判断した。 シカ排除実験地での調査を年度当初に計画して、旅費及び謝金として使用する計画である。また、混植実験を継続するための謝金も計上する。最終年度に当たって、学会発表や情報収集・研究打合せのための旅費にも計画的に使用する予定である。
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