研究課題/領域番号 |
24658139
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
伊藤 哲 宮崎大学, 農学部, 教授 (00231150)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 表土保全 / 雨滴侵食 / 表面流侵食 / ヒノキ林 / 保護樹帯 / 広葉樹リター / 林床被覆 / 斜面傾斜 |
研究概要 |
宮崎大学農学部附属フィールド科学教育センター田野フィールドにおいて、斜面傾斜の異なる二つのヒノキ林に調査地を設定した。各林分の尾根に配置された保護樹帯(広葉樹林)との林縁から5mおきに、4列のプロットを5個ずつ設置した。それぞれのプロットに、林床被覆の観測を行う1m×1mのコドラート、簡易林内雨量計、落葉落枝を補足するリタートラップ、土砂および落葉落枝の地表での移動を補足する土砂受け箱、および雨滴侵食により飛散する土砂を補足するスプラッシュカップをそれぞれ1個ずつ設置し、平成24年5月から平成25年3月までの11か月間観測を行った。緩傾斜地では、裸地比率は5-20%の範囲にあり、林縁からの距離に対応じた裸地比率の違いは見られなかった。また、距離に依存せず広葉樹リターによる被覆率が60-70%程度であった。これに対して、急傾斜地では、保護樹帯林縁から15mの範囲までに、距離に応じて広葉樹リターによる被覆率が減少し、裸地比率が増加する傾向が見られた。急傾斜地ではリターフォールも林縁から15m以内で多い傾向が見られ、保護樹帯からのリター供給が林縁から15mまでの範囲で林床被覆に貢献していることが明らかとなった。地表のリター移動量は、林床被覆率が高くなると減少する傾向にあり、また林縁から20mまでの範囲で距離に応じて増加することが明らかとなった。以上の結果から、緩傾斜地では保護樹帯の効果は少ないものの、侵食のポテンシャルの高い急傾斜地では、保護樹帯林縁から15m~20mの範囲まで、広葉樹リター供給による表土保全効果がある可能性が示された。また、城山国有林における既往の間伐試験地のモニタリングにより、広葉樹リターとヒノキリターでリター供給の季節変動と林床のリター被覆との関係性に違いがあることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終達成目的のうち、(1)広葉樹林パッチから隣接人工林へのリターフォール量に及ぼす斜面傾斜の影響、および(2)林床のリターの二次移動に及ぼす斜面傾斜(促進要因)および隣接人工林の下層植生(抑制要因)の影響については、1年目の結果で概ね作業仮説が検証できた。また、(3)供給・二次移動リターによって形成される林床被覆が雨滴侵食の発生及ぼす影響についても、林床被覆全体と土砂移動との関係を定量化することができた。林床被覆形成における保護樹帯由来リターとヒノキ林下層広葉樹由来リターの分離評価が今後の課題であるが、この点は平成25年度の調査で達成可能と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
宮崎大学田野フィールドおよび城山国有林の試験地モニタリングを継続することにより、 リター供給・被覆、土砂移動の季節変動に関するデータを集積し、平成24年度に検証結果を、年変動を考慮したさらに確度の高いものにする。また、城山国有林ではヒノキ林内の広葉樹リター供給源である下層広葉樹の多寡に着目した多地点調査を行い、保護樹帯の表土保全機能の貢献度とヒノキ林の下層植生構造との関係を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査旅費:600千円(宮崎-熊本 20人日) 学会発表旅費:400千円(英国 6人日、東京3人日) 調査用消耗品:100千円(シードトラップ、土砂受け箱補習資材等)
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