平成25年度の成果: 既往試験地のモニタリングを継続することにより、リター供給・被覆、土砂移動の季節変動に関するデータを集積し、尾根の保護樹帯からのリター供給の表土保全効果を定量的に明らか異にした。 研究期間全体を通した成果: 尾根に配置されている保護樹帯から供給される広葉樹リターによる林床被覆(地表面の被覆)が、表土の雨滴侵食をどの程度からの保護できるかを実験的に評価した。 (1)斜面傾斜の異なる二つのヒノキ林に調査地を設定し、各林分の尾根に配置された保護樹帯(広葉樹林)との林縁から5mおきに、4列のプロットを5個ずつ設置した。それぞれのプロットで、林床被覆率、林内雨量、リターフォール量、表面流侵食量および雨滴侵食量を平成24年5月から平成26年3月までの23か月間観測した。その結果、①保護樹帯から10mまでの範囲で広葉樹リターフォール量および林床被覆率が下方斜面より高く、この傾向が急斜面で明瞭であること、②急斜面では、保護樹帯から10mまでの範囲で土砂移動が著しく抑制されること、③下層植生および林内雨量には、保護樹帯からの距離に伴う変化がほとんど見られないこと、を認めた。これらのデータを用いて、保護樹帯による下方斜面の表土保護効果を一般化線形回帰モデルによって分析したところ、保護樹帯からの距離が近いほど、広葉樹リターフォール量が多くなり、急斜面では広葉樹リターフォール量が林床被覆率を支配することにより、保護樹帯近辺での表土侵食の軽減効果を規定していることが明らかとなった。 (2)さらに、より広範な立地条件で保護樹帯の機能を評価するために、保護樹帯からの距離と林床被覆率および表土侵食状況の多地点調査を行った。その結果、急斜面のヒノキ林においては保護樹帯から10-15mの範囲で林床被覆率が高く保たれており、その結果、表土の侵食が抑制されていることを確認した。
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