アコウはコバチとの送粉共生を維持するため、年間のどの時期にもいずれかの個体が結実する周年結実を実現する必要がある。しかし分布北限域の四国南部では、遺伝的多様性の低下や冬期の低温のために周年結実ができていない可能性がある。そこで足摺・室戸のアコウ個体群について、結実行動を観察し遺伝的多様性を比較した。足摺・室戸ともに周年結実は維持されていたが、結実個体の少ない秋冬期に規則的に結実する個体は認められなかった。周年結実がより安定していると示された足摺のほうが遺伝的多様性は高かった。北限域においても周年結実は維持されているが、その安定性は遺伝的多様性に支えられている可能性が示された。
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