研究課題/領域番号 |
24658143
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
前原 紀敏 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (20343808)
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研究分担者 |
中村 克典 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, グループ長 (40343785)
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キーワード | 昆虫 / 分布 / マツノマダラカミキリ / 性成熟 |
研究概要 |
昆虫の分布の北限は、越冬可能温度(耐寒性)や生活環完了に必要な有効積算温量(実際の温度と昆虫の発育限界温度との差の時間積算)によって決まっているとされることが多い。しかし、研究代表者および分担者は、生活環を開始するために必要不可欠な成虫の 産卵の成否に着目した。本研究の目的は、「マツノマダラカミキリの分布の北限は、夏の夜の寒さが成虫の卵巣発育および寿命に影響することによって決まっている」という仮説を検証し、成虫になった後、性成熟のために摂食する必要がある昆虫の分布の北限を決定 する要因を明らかにすることである。今年度は、以下のことを行った。 1.マツ林の夏季の林内温度の測定:マツノマダラカミキリが分布する秋田市、分布境界の盛岡市と青森県深浦町、および分布しない青森市において、昨年度に引き続きマツ林の林内温度変化を測定したところ、今年度も林内温度は青森市が低かった。 2.マツノマダラカミキリの人工飼育:次年度の実験材料を得るために、マツノマダラカミキリ(岩手県産と茨城県産)の幼虫を人工飼料で飼育した。 3.マツノマダラカミキリ(岩手県産)の卵巣発育および寿命に対する温度の影響の解明:10℃恒温区では、実験期間中(成虫が40日間摂食)に卵巣が発育しなかった。25℃(14時間)-10℃(10時間)変温区では、卵巣は発育したが、25℃恒温区と比べて、成熟卵数が少なかった。一方、各処理区とも実験期間内に死亡する成虫はなく、寿命に対する温度の影響は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた4地点(マツノマダラカミキリが分布する秋田市、分布境界の盛岡市と青森県深浦町、および分布しない青森市)において、マツ林の林内温度変化を継続的に測定できている。また、当初の計画には入っておらず、昨年度の研究実施状況報告書の今後の研究の推進方策で記述した10℃恒温区と25℃-10℃変温区についても、今年度に調べることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、26年度はセンノカミキリ及びキボシカミキリについても卵巣発育に対する夜の低温の影響を調べ、マツノマダラカミキリと比較することにしていた。しかし、25年度に、当初の計画にはなかったマツノマダラカミキリについて複数の低温の影響を調べる実験を行ったため、26年度は、当初25年度に行う予定であった岩手県産と茨城県産のマツノマダラカミキリの比較を行うことに変更する。
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次年度の研究費の使用計画 |
受理された短報2報の別刷代の請求が、次年度に回ったため。 繰り越した額は上記別刷代に充て、次年度分として請求した助成金は、当初の予定通り使用する。
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