研究課題/領域番号 |
24658144
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
酒井 正治 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (00353699)
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研究分担者 |
世良 耕一郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00230855)
林 徳子 独立行政法人森林総合研究所, きのこ・微生物研究領域, 主任研究員 (20353815)
山田 竜彦 独立行政法人森林総合研究所, バイオマス化学研究領域, チーム長 (90353903)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 有機物分解 / 炭素同位体比 / 微量元素 / リグニン / セルロース |
研究概要 |
森林生態系の炭素現存量の約半分を占める土壌炭素の分解速度、土壌腐植の起源およびそれらに影響する要因について理解することは、地球レベルでの大気炭素収支を予測する上で不可欠と考えられている。ここでは、炭素同位体比および微量元素を指標に、土壌有機物の長期貯蔵メカニズムの解明を目指している。土壌への有機物供給源である葉および細根の抽出成分(エタノール抽出分、アルベン抽出分、クラソンリグニン、ヘキサン抽出分、脱脂粉分、熱水抽出分、セルロース)の炭素同位体比を比較検討した結果、リグニンはバルク(抽出処理なし)より、低い炭素同位体比を、セルロース、熱水抽出成分および脱脂粉末は高い炭素同位体比を示した。このことは、リグニン(一般に、分解が遅いといわれている)が高い炭素同位体比を示すだろうとの予測と反対の結果となった。これは、セルロースなどの高い炭素同位体比を示す成分が土壌有機物形成に寄与する割合が高いことを示唆していた。また、易分解性成分であるセルロースが土壌に入ると難分解性物物質に変質する可能性を示唆するが、詳細については今後の検討課題である。また、各抽出成分とも細根の炭素同位体比は、葉のそれより高い値を示し、葉と細根の成分合成過程に違いが認められた。 また、荷電粒子励起X 線放射(PIXE)測定装置を使って、深さ1m土壌断面から採取した土壌の微量元素を分析した。検出された26元素うち、深くなるにつれ、元素濃度が増加する元素(Al,Fe,Ti,Yなど)、濃度が減少する元素(P,Ca,S,Mn等)、増減の変化が不明元素(Siなど)に分けることができた。濃度増加傾向元素は風化による溶脱・集積の影響が大きく、濃度減少傾向元素は生物濃縮の影響が大きく関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究者の各分野の横断的連携により、研究成果を予定通り出すことができた。また、積極的に学会で発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
土壌の抽出分画を行い、各分画成分の炭素同位体比および微量元素分析を行う。植物リター(葉および細根)の分解過程と土壌中の長期安定物質への変遷過程をリンクさせながら、土壌有機物の分解・堆積過程を解明するととともに、モデル化を行う。なお、えられた成果は積極的に学会等で発表するなど、成果の普及に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
土壌の成分抽出、それらの炭素同位体比および微量元素分析にかかわる試薬、実験器具、作業費等に使用する。さらに、最終年度であるため、成果公表を行うための学会参加等にも使用する。
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