研究課題/領域番号 |
24658148
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
窪野 高徳 独立行政法人森林総合研究所, 企画部研究評価科, 科長 (80353671)
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研究分担者 |
市原 優 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (10353583)
阪上 宏樹 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40604822)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 花粉症 / 菌類利用 / 花粉飛散防止 / クロマツ / アカマツ / シラカバ / ハンノキ |
研究概要 |
都市圏の住民に問題となっているカバノキ科樹木及びマツ科樹木の花粉症を防止するため、スギ黒点病菌(Sydowia japonica)を用いた花粉飛散防止法の開発を目指す。当年度は、実験林内に植栽したカバノキ科樹木(シラカンバ・ハンノキ)及びマツ科樹木(クロマツ・アカマツ)の雄花にスギ黒点病菌を接種し、雄花を枯死に導くことが可能かどうかを明らかにする。2012年4~5月上旬にかけて、「分生子乳化剤」を花粉飛散直前のクロマツ、アカマツ、シラカバ及びヤマハンノキの雄花に、散布液を接種した。対照には乳化剤だけを用いた。クロマツ及びアカマツでは、接種2週間後に、シラカバでは接種3週間後に、ヤマハンノキでは接種2週間後に雄花の開花状況を調査した。開花直前のクロマツ、アカマツ及びシラカバの雄花にスギ黒点病菌を接種した結果、接種区と対照区共全ての雄花が開花し、発病は認められなかった。同様に開花直前のヤマハンノキにスギ黒点病菌を接種した結果、接種と対照共に接種の影響とは別と思われる開花しない雄花があったものの、発病は認められなかった。接種2週間後の雄花をSEMで観察したところ、シラカバ及びヤマハンノキ共に接種した雄花の表面や葯周囲に菌糸が認められたのに対して、対照ではほとんど菌糸が認められなかった。このことから、スギ黒点病菌はシラカバとヤマハンノキの雄花上で菌糸を伸長することはできたものの、葯への侵入や雄花開花抑制には至らなかったと考えられた。4~5月接種では、分生子乳化剤散布後、わずか2週間以内ですべて(クロマツ、アカマツ、シラカバ及びヤマハンノキ)の雄花が開花し、本菌の感染は認められなかった。接種時の4~5月上旬には、雄花はすでに成熟しており、花粉粒は1分子の状態であった。このことから、4~5月の成熟した雄花に対する散布処理は、雄花の枯死効果はないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スギ花粉及びヒノキ花粉の飛散を防止するスギ黒点病菌(Sydowia japonica)をカバノキ科樹木(シラカンバ・ハンノキ)及びマツ科樹木(クロマツ・アカマツ)の雄花に人工接種した結果、雄花上に定着を見たものの、雄花内部への侵入は見られず、花粉の飛散は防止することができなかったことから、当初の研究目的の達成度は低い。達成度が低くなった原因は、接種時期にある。散布処理を行った時期は4月~5月であり、花粉飛散直前の成熟雄花に接種したことから、接種菌が雄花内に感染し、十分蔓延する前に、雄花が開花したことから、花粉の飛散を抑えることができなかったと推察された。
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今後の研究の推進方策 |
スギ黒点病菌(Sydowia japonica)をカバノキ科樹木(シラカンバ・ハンノキ)及びマツ科樹木(クロマツ・アカマツ)の雄花に感染・枯死させるため、接種時期を検討する必要がある。それぞれの雄花の成熟ステージに合わせて、経時的に接種試験を実施し、本菌が感染可能な雄花の生育ステージを特定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
接種試験に際し、菌株の収集にかかる旅費及び菌の分離・培養等にかかる消耗品として研究費を使用する予定である。
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