研究実績の概要 |
リグニンを始めとする芳香族の化合物の生分解鍵中間体であるムコン酸類に着目し、その嫌気的条件における資化の可能性について検討した。北海道内33地点から採取した土壌サンプルについて、cis,cis-ムコン酸を単一炭素源とした培地にて嫌気的条件下、集積培養を行った。検討したサンプルのうち、6サンプルについて優位な生育が確認された。また、生育が示されたサンプルをtrans,trans-ムコン酸を単一炭素源とする液体培地で同様に培養した際、生育がほとんど見られなかったことから、これら微生物はcis,cis-ムコン酸を選択的に資化していることが示された。集積培養物をcis,cis-ムコン酸を単一炭素源とする寒天培地に画線培養したところ、6サンプルのうち4菌株のみが嫌気的条件で生育した。嫌気的培養においては生育が目視で確認できる濁度を示すまで概ね30日以上を要したが、単離した4菌株のうち1菌株については数日で優位な生育を示した。 また、cis,cis-ムコン酸と同様、単一炭素源として用いられるべき代表的なムコン酸類である2-hydroxymuconic semialdehydeの化学合成について検討した。2-Butene-1,4-diolから保護、オゾン分解を経て合成したC2ユニットと、2-butyne-1,4-diolから調製したC4ユニットとのBarbier反応によるカップリングにより、C6骨格を構築した。アルキンの還元と続く脱保護を行った後、酸化反応の条件検討を重ねることにより、最終生成物を導く酸化反応前駆体の合成を達成した。
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