丸太から乾燥製材品を生産するプロセスについて、製材品ベースとして年間3万m3前後を生産している製材所から実績データを入手した。それに基づき、丸太から乾燥製材品を生産する工程を皮むき・製材工程ならび乾燥・最終加工の二つにわけて、最終製品(含水率10%、密度0.4 t/m3)として1kgの乾燥製材品を生産するための必要エネルギーを、電気ならびに熱にわけて算出した。また、丸太、未乾燥製材品、乾燥製材製品の含水率をそれぞれ50%、30%、10%、さらに丸太から未乾燥製材品を生産する際の歩留まりを60%であることを前提として、LC解析ソフトGabi6を利用して全体の重量収支とエネルギー収支を求めた。その結果、このプロセスでは1kgの最終製品を生産する過程で0.787kgの木質バイオマスが得られ、これは熱エネルギーに換算すると10.45MJ相当であることが判った。一方、乾燥工程で必要とされる熱エネルギーは実績ベースで5.17MJであることから、ボイラーの熱変換効率を75%として6.89MJ相当分の木質バイオマスを利用すれば良いことが判った。したがって、このプロセスでは、余剰分として3.56MJの木質バイオマスが得られるので、これを利用してバイオマス発電を発電効率20%で行えば製材ならびに乾燥工程に必要な電力エネルギーの88%程度を賄えることが明らかとなった。さらに、最終加工工程において、5~10%分のおが屑や端材が発生すると想定すると、上記の製材プロセスでは高性能の熱電併給コジェネレーション装置を組み合わせると完全なエネルギー自立化が可能であることが示された。オーストリア視察により、同地ではすでに木質バイオマスのガス化による小型で高性能コジェネレーション装置が開発され、現場に導入されていることを確認した。我が国でも、木材利用の推進においては製材工程のエネルギー自立化が非常に重要な課題であると判断された。
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