研究概要 |
菌糸体形態変化誘導物質(MIS)の探索として,Fe源・N源の検討を行った.Fe源には,Fe2+(FeCl2)およびFe3+(FeCl3)を用い,各Fe源について100, 300, 500μMの濃度で菌糸体生長への影響を調査した. Fe3+では,1,000, 2,000 μMという高濃度の条件も検討した.その結果,菌糸体の肥厚・気中菌糸形成といった形態変化には,Fe3+の寄与が大きいことがわかった.濃度に関しては,1,000 μMの濃度まで,濃度依存的に肥厚し,気中菌糸を旺盛に形成した.菌体乾燥重量も同様の傾向を示した.また,2,000 μMという高濃度でさえ,生長阻害は見られなかった.このことから,マツタケはFe3+を好む菌であることが示唆された.N源の検討では,無機態として酒石酸アンモニウム,有機態として,3パターンのアミノ酸混合組成を検討した.無機態のN源では,肥厚せず,気中菌糸をあまり形成しない菌糸体に生長した.乾燥重量も低く,マツタケ菌糸体培養には適していないと考えられる.アミノ酸混合組成は,いずれも高い乾燥重量を与えた.興味深い事に,アミノ酸組成の違いにより菌糸体形態が異なった.N源に関しては,アミノ酸混合組成のパターンを増やして現在検討中である. アカマツ-マツタケ共培養系の確立を目指した検討では,ゲルを用いた完全人工環境下での,アカマツ無菌実生の長期培養の結果、2ヶ月程度で多くの個体が枯死した.菌体懸濁ゲルを用いてマツタケとの共培養系も試作したが,いずれも枯死・生長阻害が見られ,未だ確立には至っていない.
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