無塗装および数種の塗装仕上げを行った密度の異なる木材について、高齢者および若年者を被験者とし視覚を排除した一対比較法による官能試験、被験者の手の平性状の計測、試験体の各種物性の測定を行い、以下のことを明らかにした。 (1)木材の密度は温冷感、硬軟感に、塗装は温冷感、硬軟感、滑り感に影響を与えた。(2)温冷感では高齢者と若年者で温かいと感じる仕上げの順位にほとんど違いがなかった。(3)硬軟感では高齢者と若年者で仕上げの順位に違いがあった。滑り感では一部を除いて仕上げの順位にほとんど違いがなかった。仕上げ間の違いを硬軟感では若年者が、滑り感では高齢者がより明確に判断した。(4)手の平に疑似させた温度に加熱した金属円盤と試験体との間の熱流と温冷感との間に高い負の相関があった。(5)ほぼ同一の手の平弾力、水分量を持つ高齢者と若年者の硬軟感、滑り感の比較で、硬軟感では高齢者の知覚の鈍化が示唆されたが、滑り感では示されなかった。(6)心地よいと感じる仕上げの順位に高齢者と若年者で違いがあり、心地よいと感じる表面物性が高齢者と若年者で異なることが示された。高齢者が心地よさをより明確に判断した。重回帰分析により、高齢者では心地よさを温冷感によりほぼ予測できるが、若年者では心地よさを判断させる接触感が多様であり、少数の接触感で予測することができないことが示された。 以上の結果から、高齢者と若年者で判断の異なる接触感と、ほぼ同じ判断となる接触感があり、これらは温度、弾力、水分量などの手の平性状に大きく関係すること、種々の接触感を総合して判断すると考えられる心地よいと感じる表面は、高齢者と若年者で異なり、高齢者が心地よいと感じる表面をより明確に判断することが明らかになった。これらの結果は、高齢化社会において高齢者が快適に暮らすための居住空間の創製に寄与するものである。
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