研究課題/領域番号 |
24658160
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
西村 健 独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, 主任研究員 (10353799)
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キーワード | バイオマス / キノコ / 子実体形成 / シグナル分子 / 化学合成 / 構造活性相関 |
研究概要 |
キノコの子実体形成機構は今なお未解明の課題である。本研究では、これまでに見出されたヒラタケ子実体誘導物質の構造をヒントに、構造のデザインされた出来るだけ多くの候補化合物からなる糖脂質ハイブリッド分子のケミカルライブラリーを構築、構造-活性相関の把握と絞り込みにより、劇的なキノコ形成試薬の創出と真のシグナル分子に関する手がかりを掴むことを目的とする。 本年度はこのような候補化合物として、可変アシル基部分(炭素数n: 8, 10, 12, 14)とグルコース又はセロビオースの糖部分からなるグリセロ糖脂質アナログの2系統、1,2-ジ-O-アシル-(3-O-β-D-グルコピラノシル)-グリセロール(GlcDAG)と1,2-ジ-O-アシル-(3-O-β-D-セロビオシル)-グリセロール(Glc2DAG)の合成を完遂した。合成は既知化合物のアリル-β-D-グルコピラノシド(若しくはセロビオシド)のベンジル誘導体を出発物質とし、OsO4酸化、酸クロライド処理、接触還元の3段階で行い、収率は良好であった。これにセラミド部分の構造と起源が異なる市販のグルコシルセラミド3種(タモギタケ由来:GlcCer-T、マイタケ由来:GlcCer-M、rice由来:GlcCer-R)を加え、ペーパーディスク法による子実体誘導活性試験を行った(100ug/disk)。GlcCer-T、GlcCer-M、GlcDAG(n:10 or 14)、Glc2DAG(n:10)において培養20日後にディスク周辺に菌糸の集積と原基の発生が観察され、ヒラタケ子実体誘導物質を新規に見出すことに成功した。グルコシルセラミドにおいてはキノコ由来のものが有効でセラミド部分の僅かな構造の違いが、またグリセロ糖脂質においては糖の数、アシル基側鎖の長さが活性に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の研究期間の中で候補化合物ライブラリーの構築と生物検定は初年度と二年目に位置付けている。グリセロ糖脂質アナログ二系統を合成し、グルコシルセラミド数種も加えてヒラタケ子実体誘導物質を新規に見出すことに成功した。さらに構造-活性相関に関する知見も得られたことから、概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今回活性の見出されたグリセロ糖脂質アナログとグルコシルセラミドのサンプルについては、ディスクへの添加量を段階的に減らし、活性発現に必要な最小有効添加量を明らかにする。最終年度も引き続き候補化合物ライブラリーの拡充を図ることとし、グルコシルセラミドを増やすとともに、糖部分により長いオリゴ糖(3糖、4糖)やグルコースの代わりにマンノースで置換されたグリセロ糖脂質アナログ等を加えていくこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
参加を予定していた国内学会の中には近場の東京で開催されたもの(農芸化学会)もあること、予定していた実験の一部を次年度に繰り越した等の理由により次年度使用額が生じた。額はそれほど大きくなく(72,240円)、概ね計画通りに予算を使用できた。 次年度使用額72,240円と次年度請求額900,000円を合わせた972,240円の使用計画は以下の通りである。成果発表、情報収集を国内外の学会で行う。IUMS2014(国際微生物学連合2014会議、7月にモントリオールで開催、発表要旨は既にアクセプト)の外国旅費に35万円、国内学会旅費(日本糖質学会、日本農芸化学会等)に12万円、これら学会への参加登録費10万円、消耗品類(試薬、ガラス類)20万円、実験補助の為の人件費10万円(1人x2ケ月)、研究成果投稿料と印刷費10万円程を計画している。
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