研究実績の概要 |
本課題では、構造のデザインされた糖脂質合成モデル化合物を利用してその子実体誘導活性の有無ならびに構造活性相関を把握し、ホルモン様の劇的な活性を有する物質を見つけ出すことを目的とする。 今年度は、前年度に既にヒラタケに対する子実体誘導活性を確認したタモギタケキ由来のグルコシルセラミドならびに化学合成で得たグリセロ糖脂質アナログの2系統(1,2-ジ-O-アシル-(3-O-β-D-グルコピラノシル)-グリセロール(GlcDAG) のうちGlcDAG10、GlcDAG14(10, 14はアシル基炭素数)と、1,2-ジ-O-アシル-(3-O-β-D-セロビオシル)-グリセロール(Glc2DAG)のGlc2DAG10)について、子実体誘導活性の最小有効添加量を求める為の検定を実施した。また必要に応じ追加の合成を実施した。検定にはペーパーディスク法を用いた。各化合物それぞれ100, 10, 1μgを染み込ませた8mm径濾紙を配置したMA培地上(9cm 径シャーレ使用)で一定期間ヒラタケを培養し(暗室、25℃、10日後,100 ルクス光照下に移して17℃、20日間)、ディスク周辺における菌糸のaggregation、キノコ原基及び子実体の発生を観察した。その結果、Glc2DAG10において10μg、キノコ由来のグルコシルセラミドにおいては1μgという極小量のディスクへの添加によってヒラタケ原基を誘導することが判明した。さらに、タモギタケ由来のものとはアグリコン構造の異なる植物由来のグルコシルセラミド3種(コンニャク、小麦、大豆由来、Nagara Science社)を新たに追加し、検定に供したが、活性は検出されなかった。これらの物質を実際にヒラタケ自身が作りだしているか否かは不明であるが、キノコ形成に関与する真のシグナル分子を探索するためのキー化合物として極めて興味深い。
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