魚類の胚は大型の卵黄を持つため凍結保存をすることはできない。一方、魚類の胞胚期の割球は様々な細胞に分化する能力をもち、凍結保存をすることが可能である。また、胚細胞の分化の方向性はそこで、分離分散した割球を凍結・解凍し再集合しさせて胚を誘導ための発生工学的な基礎研究を行った。 1)胞胚期の割球を分散し、生殖系列の細胞が分化する条件で一定時間培養した。その後、胞胚期の宿主内への移植、あるいは細胞接着性のプレート上でin vitro培養し、変化を観察した。その結果、分散直後の割球は、活発な運動能力を示し様々な種類の細胞へと分化する能力を示したが、長時間培養した割球は運動性を失い分化能力も失った。また、運動能力の有無の検討を行った結果、分散して培養した胞胚期の体細胞系列の細胞は、生殖系列細胞と異なり、単純な培養ではその分化能力を維持できないと考えられた。 2)いくつかの成長因子で短時間処理された分離割球は、二次胚を誘導する能力を有したことから、人為的に中胚葉への分化を誘導することが可能と考えられた。 3)分離した割球を、接着性の基質で被膜され、カルシウムを含む培地中で培養することでスフェロイド(細胞塊)が誘導された。しかしながら、スフェロイドは上皮様の組織像を示し、卵黄上へ移植しても胚の形態を誘導することは出来なかった。
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