研究課題/領域番号 |
24658164
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
桜井 泰憲 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (30196133)
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研究分担者 |
野呂 恭成 地方独立行政法人青森県産業技術センター, 水産総合研究所, 総括研究管理員 (00508343)
山本 潤 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (10292004)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | タコ篭の改良 / ゴーストフィッシング / ミズダコ / バイオテレメトリー / 飼育実験 |
研究概要 |
H24年度は、水槽内でのミズダコの昼夜の行動差や、タコ篭におけるミズダコの行動生態を精査し、篭にミズダコ小型個体の脱出口を作るための基礎的知見を得ることを目的とした。6月から、ミズダコ亜成体4個体を円形飼育水槽(10トン容量)にて飼育した。ミズダコの巣としてセラミック製のタコ箱や岩を水槽の4隅に設置した。06-18時を昼条件としてビームライトを、18-06時を夜条件として赤色LED灯で照明し、水槽上部に設置した超高感度カメラで観察した。観察項目は、昼夜の行動比較、個体間での威嚇・攻撃行動、篭内での行動、および脱出口を用いた篭での実験である。脱出口(内径65, 55, 45, 35mmの円形リング)を各種2つずつ配置した篭を水槽内に設置し、脱出行動を観察した。なお、脱出口は上部と下部に分けて設置した。これにより、どのサイズのミズダコがどのサイズの脱出口から脱出可能かを確認した。これまで、同じ水槽内に複数個体の飼育は困難であったが、岩による巣を作ることにより、長期間飼育が可能となった。今年度の実験から、ミズダコは夜行性であること、より大型の個体ほど活動エリアが広く、他個体に威嚇・攻撃すること、タコ篭内に1個体のみ入網した場合は、そこを縄張りとして脱出しないことが明らかにできた。また、他個体が篭内に入ると激しい闘争が生じ、小型個体は共食いで死亡し、大型個体同士ではともに傷つき疲弊して死亡した。次に、脱出口を用いたタコ篭での実験では、脱出口のあるタコ篭からの脱出が観察された。入網した個体(約3kg)は、入網後3時間30分内部に留まった。ただし、他個体が攻撃のために近づくと、下段の一番大きな65mmの脱出口に腕を通して脱出した。これにより、3kg以下のミズダコは65mm口径の脱出口から脱出できることを初めて確認できた。この成果を用いて、H25年度は実際の操業現場での実証試験を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度は、まずミズダコの複数個体を同じ水槽で飼育できるかが、もっとも本研究の遂行に重要であったが、これをクリアーできた。加えて、個体間での昼夜間の行動特性、威嚇・攻撃行動のパターンと個体間での頻度、タコ篭内に餌を入れると、容易に侵入すること、入った個体は脱出せず篭内に居座ることなど、操業現場では観察できない行動特性を明らかにできた。さらに、口径の異なる円形リングを篭に取り付け、どのサイズのリングから脱出可能かについても、口径65mmのリングであれば、3kgサイズのミズダコが脱出できることを、初めて明らかにすることができた。この3kgサイズは、青森県では、漁獲したとしても放流すべき大きさに相当する。現在のタコ篭では、脱出できないために共食い死亡すると推定されていたが、これについても飼育実験で検証できた。当初の研究計画では、こうした現象を操業現場で確認することを目指していたが、飼育実験によって明らかにできたため、実施しなかった。また、操業現場でのミズダコのタコ篭周辺での行動をバイオテレメトリーで追跡する予定であった。しかし、秋以降の海況が悪く実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
すでに篭に65mmのリングを装着することによって、3kg以下のミズダコを脱出させることが可能であることから、脱出口を付けた篭と既存の篭での実証試験を、H25年度春および秋に実施する予定である。これには、バイオロギングによる各個体の行動追跡も実施する計画である。なお、脱出口の篭への取り付け場所などについては、水槽飼育実験が必要なため、H24年度に続いて実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
すでに、バイオテレメトリー関連の機器類はH24年度に購入済みであり、操業現場での行動追跡試験は、春から実施する。脱出リングを装着した新型タコ篭の製作と有効性の検証のため、既存の篭の購入と改良篭の製作に研究費を使用する。また、操業現場での実証試験には、比較的長期間、操業現場に滞在する必要があるため、旅費、漁業者への協力謝金などに研究費を支出する。
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