研究課題/領域番号 |
24658170
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
海野 徹也 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (70232890)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | クロダイ / 広島湾 / 授精卵 / 発生段階 / 減耗 |
研究概要 |
広島湾はクロダイの主要漁場として知られ、本種の卵密度は30~100粒/m3に達する。その一方で、ふ化直後の仔魚の密度は0.5個体/m3以下となる。このことから、ふ化までの約2日間に浮遊卵が激しい減耗に直面していることが伺える。本研究の主な目的は、広島湾におけるクロダイの分離浮遊卵を実験モデルとして、これまで未知である沿岸性海産魚の分離浮遊卵の減耗過程を明らかにすることである。 初年度の平成24年度は発生段階の異なる授精卵を入手し、ミトコンドリアDNA分析によって卵発育段階を推定する技術を確立した。また、フィールド調査はクロダイの産卵盛期に卵採集を24時連続で行い、発育段階から産卵時間を推定した。5~7月の観察で、1細胞期卵密度(個/m3)は2.3~166と、採集日によって変動がみられた。1細胞期の卵は日没以降増加し、深夜以降は減少する傾向が見られた。逆に、深夜以降は桑実胚などの発生が進んだ卵が多数得られ、1細胞期卵の出現時間のピークは20時から22時にあった。 今後、受精卵の発育段階の同定を正確に行うことで、クロダイの産卵場や産卵時間が明らかになる他、発生段階に伴う卵密度の変化から浮遊卵の減耗が推定でき、産卵場から採取した卵密度から親魚数までも明らかになる。これらの知見は、クロダイの産卵生態の解明のみならず、産卵場の特定や資源管理に応用できると期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①初年度は、クロダイ親魚を用い人工授精を行う。人工授精で得られた受精卵を用い、発育段階毎(概ね6時間間隔)に卵を採集する。これらの段階別授精卵を用いて、各発生段階の卵のDNA量を測定することで、DNA量と発育段階の関係を明らかにする。 ②最初の①のステップで、DNA量が測定できなかった発生段階については、クロダイに特異的なマーカーによる定量PCRを行い、発育段階とDNA量に関してさらに詳細なアッセイ系を確立する。 ③フィールド調査としては、広島湾の5定点で5月下旬に24時間連続のクロダイ卵の採集を行い、発育段階から産卵時間を把握する。これは、本種の産卵時間を正確に把握するためと、今後の研究で卵の採集調査時間が発育段階に及ぼす影響を考察するためでもある。 現在のところ、①~③は概ね申請時通りの成果が得られているため、本評価を与えた。次年度以降も計画に従い研究を遂行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、研究計画は概ね申請時通りであり、次年度以降も計画に従い研究を遂行する予定である。 平成25年度は広島湾の15定点で、水中ポンプにより受精卵を採集する。卵の採集は数万粒を予定し、そのうち10%(約1,000粒)を目安に発育段階を調べる。発育段階は定量的PCR法により推定する。また、卵採集時に採集された仔魚密度を調べる。 26年度は25年度の成果をもとに、受精卵の多い定点と少ない定点10定点で受精卵を採集する。25年度と同様の解析を行うと同時に、定点近くの沿岸で着底稚魚の採集を行う。まとめとして、①25~26年度に採集した受精卵の発育段階毎の密度を明らかにし、減耗過程を明らかにする。②発生が進んだ卵(発眼卵など)の密度と仔稚魚の密度に関係かあるかを明らかにする。③PCR-蛍光法を経た卵のアリル型と仔魚のアリル型を比較し、浮遊期卵の遺伝分散を考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は、クロダイの産卵ピーク時間をなるべくさけ、広島湾の15定点で、水中ポンプによる受精卵の採集を数回行う。採集した卵を収容するため、プラスチック器具類を、卵採集のための傭船料を計上している。 また、採集した1,000粒程度のクロダイ卵よりDNAを抽出し、定量的PCR法により発育段階を推定する。さらに、クロダイマイクロサテライトDNAマーカー7座(ACS3~17)を、蛍光プライマーによるPCR法で増幅する。PCR産物をキャピラリーシーケンサーに供し、フラグメント解析にてアリル型と蛍光強度を読み取る。これら多量の卵に対するDNA解析のため、消耗品として薬品類、プラスチック器具類を計上している。なお、旅費は主に広島湾に赴くための県内旅費として計上している。
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