研究課題/領域番号 |
24658171
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
望岡 典隆 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40212261)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 仔魚 / 食性 / 初期餌料 / 尾虫類 |
研究概要 |
ウナギの人工種苗生産は、水産総合研究センター養殖研究所における長年の研究よりシラスウナギの生産に成功し、平成22年には完全養殖にも成功した。しかし、急務とされる種苗の安定大量生産には至っていない。原因については親魚の質、卵の質、飼育環境、餌などが提起されているが、その中で緊急に取り組むべき課題は初期餌料の新規開発である。本研究では天然のウナギ目葉形仔魚が食べている餌を詳細に解明し、これをベースとした新規餌料を開発し、安定大量種苗生産に資する技術開発を行うことを目的とする。 黒潮沿岸域(宮崎県延岡沖)、黒潮海域(トカラ列島近傍)、ウナギ産卵場海域(西マリアナ海嶺域)において、ファインメッシュプランクトンネットで各層鉛直曳網を行い、オタマボヤ類の種組成と鉛直分布を明らかにした。海域別の出現種数は、延岡沖で3科9属17種、黒潮海域で2科7属24種、マリアナ海域で2科8属27種であった。個体数密度 (inds. m-3)は、延岡沖 (0-30 m) では1842.7 、黒潮海域 (0-200 m) では730.2 、マリアナ海域 (0-200 m) では635.5 であった。個体数密度最大層とクロロフィルa極大層は概ね一致していた。それぞれの海域の優占種は、延岡沖から黒潮海域にかけてはO. longicauda、O.rufescens、マリアナ海域ではFritillaria borealis f. sargassiであり、これらが放棄したハウスがそれぞれの海域に出現する葉形仔魚の餌資源となっていると推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度はウナギの接岸回遊過程におけるオタマボヤ類の種同定を行うことが目的であった。各海域における優占種を明らかにすることができ、目的はほぼ達成された。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究において、餌候補として選定したオタマボヤを採集し、飼育する。葉形仔魚の餌としては、オタマボヤ類が放棄したハウスのうち、仔魚の発育段階に応じ、摂餌可能なサイズのハウスを新規初期餌料とする。なお、どの餌で飼育したオタマボヤ類ハウスを仔魚が好むかを検討するため、オタマボヤ類の餌とする植物プランクトンの割合を変えて飼育する。 新規餌料の評価には、天然のふ化仔魚(同一種)を用いる。申請者のこれまでの調査によって、宮崎県延岡湾沿岸および福岡県玄界灘で初夏~秋に、稚魚ネットの表中層曳網によって、ハモ、ウツボ、ウミヘビ科の卵を多量に採取することができることを明らかにしている。これら天然卵を分類後、飼育し、得られたふ化した仔魚を用いる。 摂餌開始期仔魚を奥行きが狭いガラス水槽に収容し、オタマボヤ類ハウス餌料を与え高精度デジタルカメラで摂餌行動を撮影し、併せて消化管内の観察を行い、ハウスの消化管移動速度、排泄時間などを測定する。 さらに飼育を続け、投餌区と無投餌区における生残率、成長率を比較し、ハウス餌料の評価を行う。生残成績の良いオタマボヤハウス餌料については、天然ウナギ目仔魚とオタマボヤとの混養を試み、仔魚の成長と生残を検討する。以上により、天然仔魚の食性に基づき、ウナギ仔魚の嗜好性が高いオタマボヤ類ハウス由来餌料を開発し、その安定大量作出法と自動給餌法、あるいは仔魚とオタマボヤ類との混養法を考案し、ウナギ人工種苗安定大量生産の方向性を提示する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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