ニホンウナギ)の人工種苗生産は念願の完全養殖に成功した。しかし、種苗の大量生産には至っていない。問題点として養成親魚や卵の質、飼育環境、初期餌料等が提起されている。現在用いられている初期餌料はサメ卵をベースとしたものであるが、水質管理が困難であること等により、量産化には新たな餌の開発が必要不可欠である。本研究は天然のウナギ目仔魚の餌を詳細に解明し、これをベースとした新規餌料を開発し、その評価を天然ウナギ目葉形仔魚を用いて行うことにより、安定大量種苗生産に資する技術開発を行うことを目的とする。 前年度までの研究により、尾虫類のハウスと糞粒は外洋域でも沿岸域においてもウナギ目葉形仔魚の消化管から高頻度で見出される主要な内容物であることが明らかになった。また、ニホンウナギの産卵海域である西マリアナ海嶺南部海域で網目0.06mmのプランクトンネットによる採集で得られた尾虫類は、2科(オタマボヤ科、サイヅチボヤ科)8属27種に分類された。尾虫類の個体数密度は50-100m層にピークが認められた。当海域ではネッタイサイヅチボヤとアリサイヅチボヤおよびトガリオタマボヤの3種で約60%を占め、これらが放棄したハウスや糞粒がウナギ目仔魚の餌資源となっていると推測された。この結果に基づき、これら外洋性の尾虫類の培養を試みたが、これら外洋性種は沿岸性種に比較して脆弱で、ハンドリング方法に課題が残された。一方、日向灘において稚魚ネットによって得られたウナギ目卵は主にウツボ科、ウミヘビ科、クズアナゴ科に分類された。最終年度はこれらの卵を飼育し、外洋性オタマボヤ類の培養は困難であったため、代用として尾虫類由来懸濁物質(マアナゴ仔魚の消化管内容物)を与えたところ、いずれの仔魚も活発な摂餌行動を示し、腸管内に内容物が認められたが、飼育装置のトラブルにより、飼育生存日数13日目で実験を終了した。
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