研究課題/領域番号 |
24658173
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
阪倉 良孝 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授 (20325682)
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研究分担者 |
崎山 一孝 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所, グループ長 (90426312)
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キーワード | 水産学 / 種苗放流 / 行動学 |
研究概要 |
『干潟放流種苗(トラフグ,クルマエビ,アサリ)の間に被・捕食関係があるが,各々の種にとって最適なマイクロハビタットがあり,そこに放流することで種間干渉を軽減できる』という作業仮説のもとに,フィールドと実験室レベルの2面から実験・調査を実施した。 実験I-1:干潟域における放流種苗の種間関係;瀬戸内海区水産研究所海産無脊椎動物研究センター近辺の干潟において,トラフグ,クルマエビ,ガザミ,アサリの放流が行われている。そこで,当該海域においてこれらの生物の採集と生息状況の調査を実施したが,トラフグ稚魚を採集することが出来ず,消化管内容物の確認ができなかった。そこで,南伊豆栽培漁業センターに依頼して平成25年12月に標本の分与を得て,現在これを解析中である。 実験I-2:実験環境下の放流種苗の種間関係;天然水域では種苗の行動調査が困難なため,実験水槽(30~100 L)を利用して,種苗種間の被食・捕食関係を調査した。異なる体サイズのトラフグ(30~100㎜)またはクルマエビ(40㎜)を異なる殻長のアサリ(0.2~11㎜)種苗と同所させて,種間関係の時間経過を定量解析した。トラフグ人工種苗は体長60㎜以降にアサリに対して捕食行動を示すことを確認した。また,放流サイズのクルマエビ(40㎜)について捕食するアサリの殻長を精査し,第2顎脚が捕食したアサリのサイズと一致することを見いだした。 実験II:対象種種苗放流に適正なマイクロハビタットの解明; 実験I-2と同様に,異なる体サイズのトラフグ種苗について,塩分と底砂および湧水を設けた水槽を利用して,それぞれの選好する環境の特定を試みた。その結果,体長60㎜以上の個体が低塩分環境で強い着底行動を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
飼育実験のうち実験IIについては当初計画していた実験をほぼ終了し,実験I-2について,当初予定していた塩分と底砂に加えて湧水環境についても定量実験を実施することができ,当初計画を上回る成果を上げることができたと考える。 一方,実験I-1の野外調査では,当初予想していた種が採集できず,解析が遅れている。 以上の観点から概ね順調に進んでいると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
実験I-1:干潟域における放流種苗の種間関係; 前年度に引き続きフィールド調査を継続し,トラフグの消化管内容物調査を実施する。 実験I-2:実験環境下の放流種苗の種間関係; 実験水槽(500~2,000 L)を利用して,種苗種間の被食・捕食関係の調査を継続する。異なる体サイズのトラフグ(30-100 mm),クルマエビ(20~60 mm),アサリ(10~30 mm)種苗と同所させた場合に,時間経過とともにどのような種間関係が生じるかを行動学的に定量解析する。トラフグとクルマエビの種苗は実験I-1で放流されているものを購入し,アサリについては瀬戸内海区水産研究所海産無脊椎動物研究センターで放流用に種苗生産をしたものを使用する。 実験II:対象種種苗放流に適正なマイクロハビタットの解明; 異なる体サイズのクルマエビ種苗について,塩分勾配や,異なる粒径・粘度の底質を設けた水槽を利用して,体サイズや発育段階に応じてどのような底質を選好するかを定量解析する。塩分と底質への選好性を調べることで,より天然域の生態を反映した行動特性を明らかにすることが出来る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者の所属する水産総合研究センター側の判断で,基金として当座の使用に当てるために繰り越した。 本年度は最終年度に当たるため,残のないように使用する。
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