研究課題
『干潟放流種苗(トラフグ,クルマエビ,アサリ)の間に被・捕食関係があるが,各々の種にとって最適なマイクロハビタットがあり,そこに放流することで種間干渉を軽減できる』という作業仮説のもとに,フィールドと実験室レベルの2面から実験・調査を実施した。フィールド調査により,体長30㎜前後のトラフグ人工種苗を放流すると,非常に浅い水域に出現すること,およびこれらの個体は甲殻類を選食していることを確認した。メソコスムによる実験で,放流サイズのトラフグ,クルマエビ,アサリの3種を共存させたところ,クルマエビが減少し,着底直後の大きさの小型のアサリ(殻長3.2 mm)も減少した。実験室でこれら3種の補食条件を精査した。その結果,トラフグ稚魚には低塩分と底砂に対する選好性があり,これらは体長50㎜を超えると顕著になった。また,トラフグ稚魚はクルマエビ稚エビを積極的に補食するのに対し,アサリに対する摂餌は体長50㎜を超えると見られるようになり,これらの結果はフィールド調査の結果を支持するものであった。クルマエビ(体長23.1-141.2 mm)は殻長1.6-10.4 mmのアサリを捕食し、その体長比は1.3-9.5 %となった。クルマエビの第2顎脚長は捕食したアサリの最大殻長と一致した。この結果は,クルマエビ放流種苗は放流サイズのアサリは捕食しないが,天然の着底直後の稚貝を補食するというメソコスム実験の結果と一致した。トラフグの小型種苗は塩分選択性と底棲性が低く,食性に制限があるという点から,着底行動を促進する流れと底質を持つ河口に近い砕波帯に放流することが望ましいといえる。この場合,クルマエビの放流場所と一致する可能性があるので,放流時期をずらす必要が生じる。現行のアサリの放流サイズは他種の放流種苗ではなく天然域の捕食生物による被食が減耗要因の一つとしてあげられた。
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水産増殖
巻: 63 ページ: 印刷中
Aquaculture Science
巻: 62 ページ: 99-105