研究概要 |
シオミズツボワムシでは、母ワムシのおかれた環境や加齢によって、次世代以降の両性生殖発現が変化する事例が報告されている。この遺伝様式として、エピジェネティックな遺伝と母系効果の2つが考えられる。ワムシの遺伝様式の検討には次世代への遺伝が確認されている両性生殖誘導因子を用いることが有効で、これを検討するには両性生殖誘導条件の最適化がまず必要となる。平成24年度では、過去に検討例がない、同一密度での他個体との共存効果(Grouping effect)を検討すると共に、母ワムシの加齢による両性生殖誘導への影響を複数世代で調べた。 培養水量とワムシ数を0.1, 1, 10 mLに各1個体、0.3, 3, 30 mLに各3個体、0.5, 5, 50 mLに各5個体に設定した(各々0.1, 1, 10個体/mLに相当)。また、母ワムシの加齢が次世代から第3世代までの両性生殖誘導に与える影響を個別培養で求めた。その結果、高密度下で両性生殖の発現が活発になり、他個体との共存の影響は見られなかった。また、若い親ほど高頻度で両性生殖雌を生じた。加齢が進んだ親から生じた子(単性生殖雌)は若い親から生じた子より多くの両性生殖雌を生じることが明らかになった。 メチル化DNA解析に必要な損傷の少ない高分子ゲノムDNAをワムシより精製するため、シリカメンブレンを用いたキット(シリカキット)、タンパク質沈殿剤によるキット(沈殿キット)、およびproteinase Kとフェノールを用いた方法(フェノール法)によりDNAを精製し、精製効率および純度を比較した。この結果、精製効率はフェノール法、純度はシリカキットとフェノール法が優れており、沈殿キットはワムシDNA精製には不適であった。25年度以降は、フェノール法とシリカキットで精製したDNAの制限酵素処理を行い、メチル化DNA解析を開始予定である。
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