研究課題/領域番号 |
24658179
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
岡崎 雄二 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (90392901)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
混合域で採集された2010年級群のマイワシ稚魚の食性について、1990年代から2000年代に採集されたものと比較を行った。その結果、2010年級のマイワシ稚魚はParacalauns属の成体やコペポダイトを多く摂餌していた。一方、1990年代から2000年代に採集されたマイワシ稚魚は、Paracalauns属も摂餌していたがその割合は低く、Oncaea属やCorycaeus属などのポエキロストム目のカイアシ類を多く摂餌する傾向にあった。近年、マイワシは加入量増大傾向にあり、これと一致して稚魚の食性変化も見られており注目される。今後は分析・解析年代を広げ、イワシ類仔稚魚の食性の経年変動について明らかにする予定である。 またd15N窒素安定同位体分析については、分析試料量や処理方法の検討を進めると同時に、ホルマリンやエタノールといった固定・保存液のイワシ類仔稚魚組織への影響を評価するための予備分析を実施した。分析試料は土佐湾で採集されたマイワシ・カタクチイワシ仔魚を用いた。仔魚試料は凍結保存(コントロール)、5%ホルマリン保存および70%エタノール保存を行い、研究協力者(市川忠史博士)の助言を得ながら分析を進めた。その結果、マイワシ・カタクチイワシ仔魚のd15N安定同位体比に対するホルマリン・エタノール保存の影響は固定直後(1週間)から顕著に現れ凍結標本より固定標本のd15N値の方が高くなったが、2年後の凍結標本とホルマリン・エタノール保存標本の差は小さくなっていた。これらの結果については今後精査の必要はあるが、保存時間のある程度長い標本についてはd15N窒素安定同位体比に対する固定液の影響は比較的小さくなる事が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度である今年度は、所属研究所に保管しているマイワシ・カタクチイワシ仔稚魚のホルマリン浸漬標本から年代毎の標本数に偏りのないように選別を行い、選別された一部の標本については消化管内容物の分析を進めた。また、d15N窒素安定同位体分析については予備分析や固定液の影響評価を行い、次年度以降の本分析に向けて準備を進めた。さらに成果の一部については、国際学会において発表を行っており計画は概ね達成された。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続きホルマリン浸漬の仔稚魚標本の消化管内容物分析を進めると同時に同標本のd15N窒素安定同位体分析を行う。また、環境中の餌生物の経年変化について研究協力者(田所和明博士)の協力を得ながら解析を進め、黒潮続流から混合域にかけての動物プランクトンデータを用いて年代別の餌生物の種類組成を明らかにする。また餌生物d15Nのベース値の経年変動性と平均値を明らかにするため、主要な餌となる小型カイアシ類のd15N窒素安定同位体分析のための試料選別作業を開始する。なお、これらの試料は餌と捕食者の安定同位体比の時系列比較が可能となるように、できる限りイワシ類仔稚魚の標本と同じ測点で採集された動物プランクトン標本より選別を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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