近年カリブ海産のホヤTrididemnum solidumより見出された抗腫瘍性ペプチド、ジデムニンが海洋細菌Tistrella mobilisより相次いで発見された。そこで、カリブ海沿岸で採集したホヤTrididemnum solidumを、ジデムニンに着目した化学的・生化学的分析を行なうことで海洋細菌Tistrella mobilisと比較を行った。その結果、細菌の抽出物にはジデムニンBが主に含まれるのに対し、ホヤにはジデムニンAが主成分として含まれていた。また、細菌にはジデムニンAは全く検出されなかった。またホヤには7種のジデムニンが確認されたが細菌では4種であった。この結果からホヤと細菌ではジデムニン生合成機構が異なることが示唆された。そこで、ホヤの微生物叢を、次世代シーケンサーを用いて網羅的に分析したところ約83種の微生物から構成されることが分かった。その中でも共生藍藻であるSynechosystisが67%を占めた。それに対し、真正細菌ではClostridium属細菌が約9%と最大であったのに比べ、Tistrellaは0.03%であった。この結果からホヤTrididemnum solidumにおけるジデムニンの真の生産性物がTistrellaである可能性は低いと考えられ、ホヤの主な共生微生物であるSynechosistis 等によりジデムニンが産生されている可能性を初めて示したものである。
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