研究課題
申請者は真珠の輝きをつくりだしているマトリックスタンパク質を真珠や貝殻からフィルムとして分離した.本研究はこのフィルム状のマトリックスタンパク質を真珠タンパク質フィルムと名付け,その機能を探ることにより,真珠産業へと応用展開するための基礎データを得ることを目的とした.アコヤガイの貝殻から真珠タンパク質フィルムを作成した.このフィルムをアコヤガイの外套膜外面上皮と貝殻の間に挿入し,約3ヶ月間真珠養殖場でアコヤガイを飼育した.真珠タンパク質フィルム付近の貝殻面に結晶状の物質の析出が確認された.これはアコヤガイ真珠タンパク質フィルムの挿入により,結晶の析出を促進した可能性が示唆された.アコヤガイ真珠タンパク質フィルムをガラス板上に貼り付けたものをアコヤガイおよびマガキの外套膜外面上皮と貝殻の間に挿入し3~6ヶ月間真珠養殖場で飼育した.アコヤガイ真珠タンパク質フィルムの軟体部側に,新たにマトリックスタンパク質層,稜柱層および異常形態の稜柱層が確認された.これに続き,同側に正常な真珠層が形成された.一方,マガキでは,この周辺に異常なマトリックスタンパク質層が形成され,その軟体部側には葉状層,次いでチョーク層が観察された.今回,確認されたアコヤガイ稜柱層の新たなカルサイト結晶はアコヤガイに挿入された真珠タンパク質フィルムを異物と認識し,その保護のために結晶層を作り出したと考えることもできる.これらの結晶層を真珠形成に利用するにはさらなる検討を要する.
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PLOS ONE
巻: 9 ページ: -
10.1371