研究課題/領域番号 |
24658186
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
落合 芳博 東海大学, 海洋学部, 教授 (50160891)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 分子シミュレーション / タンパク質 / 魚介類 / 筋肉 / 安定性 |
研究概要 |
2種類のタンパク質について分子動力学シミュレーションを実施した。すなわち、筋収縮調節タンパク質の一つ、トロポミオシンについてはPDB: 2D3E(C末端側断片)を鋳型とし、0.1 M KCl、300Kにおいて分子動力学シミュレーションを行なった。コイルドコイル半径およびアミノ酸側鎖の曲がり角を指標に、分子の局所的な固さ、および柔らかさや揺らぎについて検討した。その結果、魚類トロポミオシンで見られる特定のアミノ酸置換が不安定性の発現に関与していることが示唆された。 次に、ヘムタンパク質の一つ、ミオグロビンについては10~37℃において100ナノ秒間実施した。マグロThunnus atlanticus (PDB ID: 2NRL)、クジラPhyseter catodon (同1U7R)およびアメフラシAplysia limacina (同1MBA)由来のミオグロビンの結晶構造を鋳型に、分子表面の水の層を7 Åとし、ff99SB力場における周期境界条件下、グロビンの部分について計算を実施した。His残基の電離状態についてはデータを改変し、中性付近における構造ゆらぎについて検討した。根平均二乗偏差(RMSD)および根平均二乗ゆらぎ(RMSF)を指標として、構造変化を予測した。その結果、3種のミオグロビンは明らかに異なる挙動を示し、温度安定性や分子内の領域別安定性が異なることが示された。いずれもN末端およびその周辺の構造が不安定であり、ヘリックスをつなぐループ部分の揺らぎが大きく、温度低下に伴って揺らぎが減少する傾向が認められた。 なお、ミオシンについては、頭部(サブフラグメント1)の構造情報を分子シミュレーション向けに編集し直し、予備的検討に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度で、トロポミオシンとミオグロビンについてのシミュレーションは、当初の予定通り完遂した。また、来年度に実施予定のミオシンのシミュレーションについても、必要な条件設定を済ませており、期間内に期待された成果をあげる見込みが高い。
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今後の研究の推進方策 |
2年目はミオシンについてのシミュレーションを進めるが、分子サイズが他のタンパク質に比べてはるかに大きいため、計算量を極力減らすために、頭部(S1)のシミュレーションに限定し、さらに時間を短縮することで対応する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
シミュレーションにより蓄積されたデータを取り出し、個別に解析し動画表示するために計算処理能力のコンピューターを購入する。また、シミュレーションの結果が、溶液中のタンパク質の挙動と一致するかどうかを調べるために、変性処理後のタンパク質を各種電気泳動に付し、染色後にバンドの定量を行なう。そのためのゲル解析装置のリース料として、一定額を割り当てる。そのほか、成果発表の旅費、研究補助に対する謝金に用いる。
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