研究課題/領域番号 |
24658188
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
森田 直樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ長 (60371085)
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研究分担者 |
佐原 健彦 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (40357166)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ドコサペンタエン酸 / ラビリンチュラ微生物 / ポリシストロニック発現 / 出芽酵母 / 高度不飽和脂肪酸 |
研究概要 |
本研究は、ドコサペンタエン酸(DPA)生産海洋性ラビリンチュラ微生物のDPA合成機構の解明を目標とし、1)DPA 合成に関与する遺伝子(群)の単離と発現、及び2)出芽酵母におけるDPA合成酵素遺伝子群のポリシストロニックな発現を実現することを目標といている。 今年度は以下について検討した。 i)DPA生産海洋性ラビリンチュラ微生物L59株の脂肪酸組成の変動;一般に、DPAをはじめとする高度不飽和脂肪酸(PUFA)は、培養環境によって変動する。L59株は細菌(特にサイクロバクタ-属LB004株)との混合培養によって増殖が活性化させる。まず、L59株用寒天培地にLB004株を塗布して25℃で培養し、そこにL59株を移植し更に25℃で培養した。2日後、菌株をループで寒天培地から回収した菌株塊を10%メタノール性塩化アセチル溶液に懸濁し、そのヘキサン抽出物をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、同方法で菌体の脂肪酸組成を分析すできることがわかった。また、DPAが増加する条件を明らかにするために、培養温度を変えて脂肪酸組成を調べている。 ii)サイクロバクタ-属LB004株の培養特性;L59株は細菌(特にサイクロバクタ-属LB004株)との混合培養によって増殖が活性化されるが、その状態で抽出されたゲノムDNAには、L59株とLB004株のものが混ざってしまう恐れがある。そこで、細菌LB004株のクロラムフェニコール感受性を確認した。LB004株は10μg/mL以上では生えないことが解った。よって、培養条件記録書には、クロラムフェニコール200μg/mLを含む培地で培養することによってL59株を純粋化できるとあるが、もう少し低い濃度でL59株を純粋化できる可能性があることが解った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
DPA 生産海洋性ラビリンチュラ微生物L59株は産業技術総合研究所(産総研)で単離された菌株であり、同菌株を単離した産総研の研究者から譲渡してもらう予定であった。しかし、東日本大震災の際に産総研も被害を受け、施設が停電になったため、超低温フル-ザーに保存してあった凍結菌株がダメージを受けてしまった様で、復活出来ない旨の連絡があった。幸いにも当菌株は特許微生物寄託センターに寄託してあったため、同センターより分譲して頂き、実験を開始することが出来る様になった。上記の様な理由により、実験は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、産総研で単離した DPA 生産海洋性ラビリンチュラ微生物L59株を実験材料として用い、ドコサペンタエン酸(DPA)合成に関与する遺伝子群のクローニングと大腸菌での発現を試みる予定であった。菌株の入手が遅くなったため、当初の予定を変更して実施する。 当初は、これまでに得られている PKS様PUFA合成酵素遺伝子の情報を基に縮合プライマーをデザインし、RT-PCR法及びRACE法により目的の遺伝子の増幅を試みる予定であった。今年度はまず、DPA 生産海洋性ラビリンチュラ微生物L59株よりゲノムDNAを抽出、次世代シークエンサーを用いて、ドラフトゲノムDNA配列を決定し、その配列を解析することによって、DPA合成酵素群を構成すると予想される各構成酵素をコードする領域を確認する。DHAやEPA合成と同様にDPA合成には複数の酵素遺伝子が必要であると予想され、更にそれぞれの酵素は多機能酵素(multifunctional polypetide)であり、かつこれら酵素をコードしている遺伝子は5~10kbpになると予想される。このようなDPA合成酵素群を構成する各構成酵素をコードする総ての完全長cDNA クローンを単離する。DPA生産海洋性ラビリンチュラ微生物L59株由来DPA合成酵素遺伝子群の出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeでのポリシストロニック発現を試みる。FMDV(foot-and-mouth disease virus) 2A regionによって、単離された各ORFを総て連結した発現プラスミドを構築、そのプラスミドを出芽酵母に導入し、タンパク質の発現及び脂肪酸組成の変動を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究協力者(研究補助員)雇用費を予定している。研究協力者は、微生物の培養や遺伝子組換え実験、脂肪酸試料を調製する際のサポートを行って頂く予定であり、研究の加速を目指す。残りの経費は主に消耗品費、国内旅費として使用する。消耗品は、一般試薬類、遺伝子関係試薬、培地類、プラスチッ ク器具である。国内旅費は、調査・研究旅費、成果発表旅費とした。実験は産総研の北海道センターとつくばセンターにまたがって行われるため、その移動のための旅費、及び研究成果発表のために使用する。
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