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2012 年度 実施状況報告書

「耕脈」からみた水田農業の構造変化:社会システム論からの接近

研究課題

研究課題/領域番号 24658195
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関三重大学

研究代表者

石田 正昭  三重大学, 生物資源学研究科, 特任教授 (80144228)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード耕脈 / 水田農業 / 農業構造変化 / 農地基本台帳 / 農業センサス / 経営継承
研究概要

平成24年度は、佐賀県吉野ヶ里町(旧東背振村)上石動・下石動・西石動地区で耕脈調査を行った。およそ30年前に西尾敏男氏が行った耕脈調査の追跡調査であるが、これについて農地賃貸借、作業受委託に精通する者(農業生産法人の代表者)から聞き取り調査を行ったほか、集落代表者(農業委員)からも現在の賃貸借・受委託関係と、それに基づくこの30年間の動きについて聞き取り調査を行った。また農業委員会、農協からも農地所有者(一般には農家と言われる世帯)の経営継承に関する聞き取り調査を行った。これらにより分析に必要な資料・情報の収集はほぼ完了した。
以上の現地調査から判明したことは、賃借人・受託者が数多くいて耕脈関係が錯綜している段階は終了し、賃借人・受託者が絞られている段階に達しているということであった。もっともこの動きは、有望な賃借人・受託者が出現している集落において観察されるものの、そのような賃借人・受託者が出現していない集落においては特定の耕脈関係は形成されておらず、集落営農に参加する者と集落営農に参加しない個別対応の者とが併存するということであった。こうした形の集落営農の成立は、直接支払い制度の導入により、農政基調が集団に手厚いものへと変化してきたことによるものであり、実質的な意味で担い手が特定化されたことを反映したものではない。実質的な集落営農の担い手の出現が待たれるところである。
現地調査ではこうした聞き取り調査を行ったほか、農業委員会の農地基本台帳、センサス統計を利用しながら耕脈関係を数量化・図式化する作業も併せて行った。これらの統計資料を使った分析では、農地所有者の経営継承という観点から1970年以降の農地賃貸借・農作業受委託の変動をとらえる作業を開始している。農業構造変化を農地所有者の経営継承という形で分析した事例はなく、新たな研究アプローチを提示することになると考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

佐賀県吉野ヶ里町(旧東背振村)上石動・下石動・西石動地区での耕脈調査はほぼ完了したが、それ以外の地区での耕脈調査が進んでいない。今後、東北、甲信越、東海、中国地域で調査地区の拡大を図ることが求められる。
一方、方法論的には、地図での表示や農地基本台帳、農業センサス等を使った経営継承アプローチの手法を開発しつつある。分析に耐えうる資料収集が今後の課題であるが、これについては農林水産統計デジタルアーカイブの利用が容易になったことにより実現可能性が高まっていると考えている。(平成25年4月より京都大学大学院農学研究科農林水産統計デジタルアーカイブ講座の研究員を併任している。)
またソーシャルキャピタル概念の適用については、現地調査の内容を深めること(現地農業者に分析結果の提示し、分析結果の意味づけを行うこと)により、より一層の知見の発見に努める必要がある。

今後の研究の推進方策

優先順位からいうと、平成25年度は山形県八幡町・秋田県象潟町で耕脈調査を行うことが喫緊の課題である。この現地調査を精力的に行うほか、24年度調査地区(佐賀県吉野ヶ里町上石動・下石動・西石動地区)の補完調査を行い、この地区の耕脈分析を完成させ、学会等での研究発表につなげていく。
また農地基本台帳、農業センサスを使った経営継承アプローチに基づいて、耕脈調査の彫琢も併せて進めていく。これは集落を単位として、農家の世代交代が農地賃貸借、農作業受委託にどのような影響を与えているかを定量的・定性的に解明するものである。世代交代が新たな耕脈形成の要因と考えられるからである。

次年度の研究費の使用計画

山形県八幡町・秋田県象潟町の現地調査を数回程度、また佐賀県吉野ヶ里町上石動・下石動・西石動地区の補完調査を2回程度考えている。
山形県八幡町・秋田県象潟町では、現地の農業委員会、農業者、農協などの協力を仰ぎ、分析に必要な情報とデータの収集を行う。また佐賀県吉野ヶ里町では、分析結果を調査協力者に提示し、集落機能がどこでどのような形で発現しているかの解明を試みる。これはソーシャルキャピタル論適用の妥当性を検証する作業になるが、現時点で有望と考えている仮説は水利による耕脈形成である。このほか、集落内ならびに集落間の関係性構築に関係するその他の要因の析出にも努める。
以上に必要な平成25年度の研究経費は旅費(70万円程度)、現地調査協力者に対する謝金(10万円程度)、資料整理に必要な人件費(10万円程度)、コンピューター関連の物品費(10万円程度)、その他(レンタカー、インターネット利用料など10万円程度)である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 備考 (1件)

  • [備考] ようこそ石田正昭のホームページです

    • URL

      http://www.bio.mie-u.ac.jp/~ishida/

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公開日: 2014-07-24  

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